2019年6月26日から中国・上海で開催されたモバイル通信の見本市「MWC上海」の現地リポート3回目。会場には世界的なメーカーや大手通信キャリアだけでなく、スタートアップ企業も多数出展していた。VR眼鏡や通信機能付き美顔器など、5G時代を見据えた斬新なデバイスを紹介する。

 「MWC上海」の会場内で、多くの人が足を止めていた展示がある。北京のスタートアップ企業「nreal」が開発したスマートグラス「nreal light」だ。見た目は通常の眼鏡とほとんど変わらないが、レンズの上部からレンズに3D画像が投射される。レンズの先にある実際の風景と、投射された映像が重なって見えることから「MR(Mixed Reality=複合現実)」と呼ばれている。

 実際にかけてみると、見た目だけでなく、かけ心地も普通の眼鏡と変わらない。それもそのはず、重さは何と88グラム。違和感なく着用できる。

従来型のヘッドマウントディスプレーとは異なり、かけ心地はメガネとほぼ同じ
従来型のヘッドマウントディスプレーとは異なり、かけ心地はメガネとほぼ同じ
レンズの上部に超小型ディスプレーがあり、レンズに投影される
レンズの上部に超小型ディスプレーがあり、レンズに投影される

 いくつかのデモコンテンツを体験することができた。RPG(ロールプレイングゲーム)のような映像では、視線の方向を変えると、映し出される映像もそれに応じて移動する。頭部の動きを6軸で追跡しており、それに応じて映像を変化させているという。また、3Dのバーチャルアイドルが歌ったり踊ったりする映像では、アイドルが視線の右側に移動すると右側から歌声が聞こえ、逆に左に行けば左側から聞こえる。さらに視線の奥のほうに移動すれば、歌声が小さくなり、まるで本当に遠ざかったかのように感じられた。まさにバーチャルとリアルが混ざったような体験だった。

nrealの創業者Chi Xu氏
nrealの創業者Chi Xu氏

 「現実の風景と、AR(拡張現実)を融合させるところがポイントだ」と語るのは、nrealの創業者であるCEOのChi Xu氏。画像処理チップメーカーの米NVIDIAや、MRヘッドセットメーカーの米Magic Leapを経て、2017年に北京のシリコンバレーと呼ばれる中関村でnrealを立ち上げた。中国のベンチャーキャピタルなどから、合計3100万ドル(約33億円)の資金を調達し、スマートグラスの開発を進めてきたという。力を入れたのは、映像や空間の感覚などをよりリアルにすることと、着用しやすいように極限まで軽くすることだ。

 4Gよりも高速大容量のデータ通信が可能になる5Gでは、4Kや8Kといった高画質動画に加えて、VR(仮想現実)やARがキラーコンテンツになるといわれる(関連記事「ファーウェイ上海研究所に潜入 5G特許の2割を生む底力とは」)。しかし、既存のVRヘッドセットはゴーグルのような形をしていて着用すると視界が遮られるうえ、重量感もある。そのため広く普及するに至っていないのが現状だ。

 透過型レンズで重さも軽いnreal lightは、それらの弱点を克服できる製品だ。軽量化のために本体側に映像処理チップは入っておらず、外付けの「nrealコンピューティングユニット」を接続するのが基本。同ユニットの代わりにスマートフォンを接続して使うこともできる。対応するスマホは、米クアルコム製のCPU「Snapdragon 855」搭載の端末。同チップは5G通信に対応しており、まさに5G時代を見据えたスマートグラスといえる。

手のひらサイズのコンピューティングユニットの接続に代えて、スマホで操作することもできる
手のひらサイズのコンピューティングユニットの接続に代えて、スマホで操作することもできる

 これに目を付けた日本企業がある。KDDIだ。MWC上海に先立つ5月31日、nrealの日本展開において戦略的パートナーシップを締結。国内利用に向けた対応をKDDIがサポートする他、日本人が着用しやすいデザインへのカスタマイズを行うという。また、スマートグラスを活用したコンテンツ創出のための実証実験も進める予定。第1弾としてフリマアプリのメルカリと協業し、「Mercari Lens」のプロトタイプ版を開発するという。これは目の前の日用品などをジェスチャーなどで指し示すと、メルカリの出品物から類似した商品を検索したり、価格などの詳しい情報を表示したりできるというものだ。

 Xu氏によると、現状のデモコンテンツではスマホ画面の操作で映像をコントロールしているが、実際の操作方法は決まっていないとのこと。音声操作や、手を使ったジェスチャー操作などが考えられる。

会場ではスマホ画面をスワイプして操作していた
会場ではスマホ画面をスワイプして操作していた

 発売時期は20年初頭を予定しており、Xu氏は「米国、中国の他、日本市場でも同時期に販売を始められるかもしれない」と発言。価格はスマートグラス単体で499ドル(約5万4000円)、コンピューティングユニットとのセットで1199ドル(約13万円)と既に公表されている。安いとはいえないが、VRヘッドセットとしては中級クラスの価格帯。使い勝手はいいだけに、有力なコンテンツを用意できれば普及が進むだろう。

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