2019年6月に中国・上海で開催されたモバイル通信の見本市「MWC上海」の現地ルポ2回目。米国の禁輸措置で注目を集めるファーウェイだが、それにひるむことなく5G戦略を推し進めている。その強さの一端を、同社の研究開発拠点の1つである上海研究所の潜入取材で垣間見ることができた。

米国から制裁のターゲットとされているファーウェイは、「MWC上海」で来場者向けの基調講演やメディア向けの記者会見などを精力的に開催。自社の優位性を強調した
米国から制裁のターゲットとされているファーウェイは、「MWC上海」で来場者向けの基調講演やメディア向けの記者会見などを精力的に開催。自社の優位性を強調した
ファーウェイ副会長兼輪番CEOのKen Hu氏(写真提供/GSMA)
ファーウェイ副会長兼輪番CEOのKen Hu氏(写真提供/GSMA)

 「MWC上海」開幕初日の2019年6月26日、ファーウェイの副会長で、輪番CEOを務めるKen Hu氏が基調講演を行った。同氏は「技術イノベーションはマラソンのようなものだ」と強調。スピードが必要なのはもちろんのこと、辛抱強さがなければイノベーションを継続できないと指摘した。同社は09年に5G技術の開発に着手し、10年間で40億ドル(約4300億円)を投資。世界の5G特許全体の約20%に相当する2500件以上を保有しているという。

長年にわたり5G関連技術の開発を行ってきたとアピール
長年にわたり5G関連技術の開発を行ってきたとアピール

 その結果、ファーウェイが優位性を持つものとして紹介したのが、5G基地局の性能だ。現行の4G基地局と比べて20倍の性能を持ち、ライバルメーカーよりも小型・軽量化に成功したという。その結果、わずか2人の作業員が2時間で設置することができ、これは4G基地局と比べて約半分の設置時間。通信キャリアの5G展開コストの低減に大きく寄与できるため、世界中のキャリアから多くの注文を獲得できているとした。

5G基地局から端末までフルラインアップで用意し、世界50の事業者に採用されているという
5G基地局から端末までフルラインアップで用意し、世界50の事業者に採用されているという

 Hu氏は「4GではTiKToKのようなショート動画アプリケーションが人気になったが、5Gではより多くの双方向コミュニケーションや臨場感ある動画サービスを見るようになる」と指摘。その上で、5Gはユーザー側だけでなくコンテンツを制作する側にもメリットがあるとした。一例として挙げられたのは、前日に開催された取引先向けイベント「5G is ON サミット」でも紹介されていた5G回線を使ったリュックサック型中継装置だ(関連記事「小型中継装置、ドローン警察……上海で見たファーウェイの実力」)。

 この装置を使えば従来の中継車が不要となり、コストや人員を大幅に削減することが可能。しかしこれは単純なコスト削減のソリューションではない。Hu氏が強調していたのは、今までと同じリソースで中継カメラの数を増やせるという点だ。今までと変わらないコストでマルチアングルの中継が可能になり、それが5GのキラーコンテンツになるとHu氏は説いていた。

展示ブース内で5Gのデモを実施

 MWC上海でファーウェイが構えた展示ブースは何と2000平方メートル。会場内では最大規模という。天井には屋内用の5G基地局を設置し、実際に高速通信を体感できるようになっていた。

 ブースの中央の目立つ場所にあるのが、4Kを上回る8K映像中継の実演。女性が細かな刺しゅうの作業を行う様子を、細かな糸1本1本まで鮮明に映し出していた。

8K映像を撮影し、5G回線で伝送するデモ。このために会場の天井には5G基地局(白い箱状のもの)が設置されていた
8K映像を撮影し、5G回線で伝送するデモ。このために会場の天井には5G基地局(白い箱状のもの)が設置されていた

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