2019年6月26~28日、中国・上海でモバイル通信の見本市「MWC上海」が開催された。最大のテーマは日本でも今年からプレサービスが始まる次世代通信技術「5G」。中でも展示に力を入れていたのが米国の禁輸措置で注目を集めるファーウェイ(華為技術)だ。日本ではあまり知られていない同社の5G戦略を、2回にわたってリポートする。
世界的なモバイル通信の見本市「MWC(Mobile World Congress)」。毎年2月にスペインのバルセロナで開かれるものが有名だが、そのアジア版が「MWC上海」だ。通信関連の展示会ではアジア最大規模。地元中国の通信キャリアや、米クアルコム、フィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソンなど国際的に知名度の高い通信デバイスメーカーがブースを構えていた。その中でも、最大規模の展示スペースを構え、さまざまなソリューションをプレゼンテーションしていたのが中国最大の通信機器メーカー、ファーウェイだ。
ファーウェイの5Gに対する意気込みはすさまじい。MWC上海が開幕する前日の2019年6月25日、展示会場に隣接するホテルに取引先などを集め、「5G is ONサミット」を開催。会の冒頭でまずスクリーンに映し出されたのは、銃弾を受けてボロボロになりながらも無事に帰還した第2次大戦中の旧ソ連軍戦闘機。米国の禁輸措置で厳しい立場に置かれたファーウェイの状況をなぞらえたものだ。通信キャリア向けビジネスグループのCEOを務めるRyan Ding氏は「我々は飛行機を修理し、飛ばし続けることができる。半導体チップ、モジュール、オペレーティングシステム、データベースの技術を持っており、自力で12カ月間飛び続けてみせる」と、米国の制裁にひるむことなくビジネスを継続する姿勢を強調した。
19年内に50万基の5G基地局出荷へ
その上で、欧州や中東、アジアなどの50社と5G通信設備の納入契約を締結し、15万基の基地局を既に納入したことを紹介。2月にバルセロナで開催されたMWCではそれぞれ30社、4万基であったことを考えると、米国の再三の警告にもかかわらず、契約する企業が後を絶たないことが分かる。また同社によれば、19年内には基地局の出荷は50万基に達する見通しという。日本市場からは事実上の締め出しを受けているが、世界的にはその技術力とリーズナブルな価格が高く評価されているわけだ。
Ding氏のプレゼンテーションでは、5Gで実現できる新たな社会的ソリューションとして、2つの具体例が挙げられた。
1つ目は5G回線を使ったテレビ中継。5Gの強みである高速大容量と低遅延を活用すれば、今までのような衛星専用回線を使わず、より低コストで高画質な映像を中継できる。中継機材はリュックサックに収まる程度の小ささで済み、中継車は不要になるという。中継車の調達には1台1000万元(約1億6000万円)が必要で、衛星回線の利用コストも年間1750万元(約2億8000万円)かかるが、これが1台当たり16万円程度の中継機器に置き換え可能だとアピールしていた。中継に必要な現場スタッフも150人から、なんと5人にまで減らせるという。既に19年6月に行われたドラゴンボートレースの中継で、中国中央電視台(CCTV)が実際に使ったとのことだ。
2つ目は「ドローン警察」。ドローンを操作に用いることで、より迅速な犯人逮捕を実現できる。現在は犯罪現場へ急行しても10分近くかかり、犯人を逮捕するには数日かかることもある。カメラ付きのドローンを使えば、3分で現場に到着でき、鮮明な4K映像を用いて犯人を上空から捕捉可能。数分で逮捕できるとした。
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