かつてネットやスマホが登場したことで新たなビジネスが生まれ、仕事や生活のあり方は一変した。今後、5Gが広がると何が変わるのか。自動車やロボットなど4人の専門家の議論から、5G時代に必要なのは単なる効率化ではなく「人の生き方の価値を高める」製品やサービスだという方向性が見えてきた。

自動車、ロボットなど4人の専門家が「5G時代のオープンイノベーション」をテーマに議論した
自動車、ロボットなど4人の専門家が「5G時代のオープンイノベーション」をテーマに議論した

 AI(人工知能)が進歩することで、人の仕事が奪われると言われる。誰でもできる単純な作業はなくなり、より高度な成果を求められる、という人もいる。そうした技術の進歩を不安視する考えが一部で広がる中、5Gの登場は我々に何をもたらすのか。

 「単に情報量が増えるだけではなく、日本人の働き方や時間の使い方が上手になるサービスや商品を生み出してほしい」「AIで仕事がなくなるということをネガティブに捉えず、自分の人生の価値をどう上げるか考えることで、いい時代になる」

 そんな議論が繰り広げられたのは、KDDIが2019年6月27日に都内で開催した5G関連イベント「KDDI 5G SUMMIT 2019」のパネルディスカッションだ。4人の識者が5G時代にどんな未来が待っているのかを議論した。そこで見えてきたのは、「人生の豊かさや、人の価値を向上させる」という5G時代の製品やサービスに求められるキーワードだ。

5Gはクルマだけでなく空もつながる

 テクニカルワード(技術用語)は禁止、これからの10年を見通しつつざっくばらんに5G時代のイノベーションを語る。そんな趣旨で議論が進んだ。まず司会者が問いかけたのは「5G時代とは何か」。日産自動車コネクティドカー&サービス技術開発本部ソフトウェア&ユーザーエクスペリエンス開発部長の宮澤秀右氏は、「移動の体験とビジネスのパラダイムシフトが起こる時代」と定義する。

日産自動車コネクティドカー&サービス技術開発本部ソフトウェア&ユーザーエクスペリエンス開発部長の宮澤秀右氏(左)と、マッシュ代表取締役の中村寛子氏(右)
日産自動車コネクティドカー&サービス技術開発本部ソフトウェア&ユーザーエクスペリエンス開発部長の宮澤秀右氏(左)と、マッシュ代表取締役の中村寛子氏(右)

 宮澤氏は「自動車業界はこの10年で、100年来の大激変が起こる」と予測する。ステアリングやタイヤがなくなるわけではないが、人間が運転する必要のない自動運転時代が来るという意味だ。電車やバスでの移動中、スマートフォンを利用している人は多い。それと同様に、車での移動中でも、運転の必要がなくなれば他にやりたいことがあるはず。「移動中の体験ニーズにより、自動車業界を中心としたエコシステムが変わる」(宮澤氏)として、そのために5G技術の活用が進むと説明した。

 さらに宮澤氏は、個人的な意見と前置きしながらも、「次の10年は、空を中心としたイノベーションが、クルマと移動のビジネスに関わる革新的な時代になるかもしれない」と展望する。

 女性を含むさまざまな人が活躍する社会を目指すプロジェクト「MASHING UP」を推進するマッシュ(東京・港)代表取締役の中村寛子氏は、ダイバーシティーの側面からイノベーションを語った。「日本は同質化しがち。これは良いところでもあるが、悪いところでもある」と課題を話した。大容量・低遅延の5Gを活用すれば、多様な働き方ができるようになる。「現状はイノベーションを起こしたい企業と、それを助ける多様性の関係がうまく機能していない。5Gがその間をサポートできたら」と期待を寄せた。