6月に政府が閣議決定した成長戦略にて、「2022年度を目途に有人地帯でのドローンの目視外飛行」を目指すことが盛り込まれた。ドローン社会の実現が迫っている。高速・低遅延の5Gの普及も、ドローンビジネスを加速。ドローンファンドを率いる千葉功太郎氏に、「5G×ドローン」でどう産業が変わるかを聞いた。
「飛行禁止区域を除き、飛行ルートの安全性確保を前提として、有人地帯での目視外飛行の目標時期を2022年度目途とし、それに向けて、本年度中に制度設計の基本方針を決定するなど、具体的な工程を示す」
これは19年6月21日に政府が閣議決定した成長戦略実行計画の一節で、ドローンの普及促進に言及したもの。有人地帯つまり人が住む都市上空を、ドローンが目視外飛行できるようにするということだ。農業の広域監視や配送、老朽化したインフラの点検や市街地の巡回警備など、さまざまなシーンでの活用が想定されている。ドローンが当たり前に飛び交う社会は、意外に近くに迫っているのだ。
そんな「ドローン前提社会」を目指すのが、個人投資家として知られる千葉功太郎氏。17年に、ドローンに特化したファンド、その名も「Drone Fund(ドローンファンド)」を設立。18年8月には、新たに2号ファンド(Drone Fund2号 / 正式名称:千葉道場ドローン部2号投資事業有限責任組合)を立ち上げた。今回は、ドローンがどう産業を変えるのか、千葉氏を直撃。次世代通信規格5Gでドローンはどう進化し、ビジネスにつながるのかも聞いた。
大企業が続々参画のワケ
今年5月には2号ファンドが52億円を調達、世界最大のドローン・エアモビリティー特化型ファンドとなりました。出資者として大手企業の参画も目立っていますが、その理由は。
千葉功太郎氏(以下、千葉) 1号ファンドを本格始動させた17年6月の時点では、まだ市場も法整備も進んでおらず、出資をお願いに行ってもドローンが産業として成り立つかどうか、懐疑的な人が多いのが実情でした。その半面、ドローンのスタートアップは続々と増加。大企業との温度差を感じていました。
しかし、昨年8月に立ち上げた2号ファンドでは、少し風向きが変わりました。既存ビジネスの延長では成長が見込みにくい環境のなか、思い切ってチャレンジしようと飛び込む大企業も出始め、出資者(LP)としては企業25社、個人投資家13人、計38先となりました。
出資者は、大手銀行から電力会社、さらにはエンタメ企業までさまざまです。
千葉 単純に資金を出すだけではなく、本業の領域とのシナジーを考えている事業会社が多いのが特徴です。
例えば、松竹は映像という形でエンターテインメントを届ける企業ですが、表現を高めるためにドローンの活用を模索している。ハリウッドでは既にドローンが当たり前に使われ、日本でも大きな可能性があります。エンタメ業界ではこの他に、エイベックスやセガサミーホールディングスなども参画しています。
また、巨大インフラを持つ東京電力系の東京電力ベンチャーズや西部ガスは点検・保守などに。オリックスはリースの対象として、日本郵政系の日本郵政キャピタルは輸送の効率化・高度化など、期待する活用領域はさまざまです。
投資先を見ると、ハードウエアだけでなく、ソフトウエアなど幅広い領域をカバーしています。
千葉 ハードやソフトはもちろんですが、実際にドローンが空を飛び回るようになった社会で必須になるコア・テクノロジーにも注目しています。
例えば、トラジェクトリー(東京・中央)が手掛けるのは、無人航空機の管制システム。一方、京都大学発のスタートアップ、メトロウェザー(京都府宇治市)が開発するビル風など風況を可視化するシステムも、将来なくてはならないものだと思います。
ハードも幅広くカバーするようにしています。小型ドローンから最大2トンの積載量を有する超大型垂直離着陸機まで、また、無人の自律型だけでなく、人がまたがって乗るA.L.I.Technologies(東京・港)のホバーバイクなどもあります。個別の企業だけでは産業をつくることは難しい。ドローンにまつわるさまざまな企業が集まって共創していくことが重要なのです。
「常時接続」の通信コストに課題も
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