2020年に日本で次世代通信5Gの商用サービスが開始となることで、我々のビジネスや生活にはどんな変化が起きるのか。携帯電話各社は、交通インフラ、医療、スポーツやエンタテインメント、街づくりとあらゆる側面で5Gの技術を浸透させようとしている。5Gの未来像を各社の展示内容から探る。
NTTドコモが見せた現実解と未来像
早期に実現可能な「近い未来」から、将来的な実現を目指す「その先の未来」まで。19年5月29日から31日まで実施された、無線通信技術のイベント「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2019」の会場内で大きな存在感を出していたのはNTTドコモの特設ブース「5G Tokyo Bay Summit 2019」だった。
比較的早い段階で展開できる5Gサービスの1つとして紹介されていたのが、NECと共同で開発した「スマート街路灯」だ。LED照明の街路灯に、5Gのネットワーク機能を加えることでさまざまな用途に使えるようにする。
会場に展示されていた街灯にはネットワークカメラが搭載されている。5Gを通じてカメラの映像をクラウドに送信し、通行人の性別や年齢などを推測する。獲得したデータをマーケティングなどに活用することを想定する。街灯を活用することで、5Gの基地局の設置コストを減らせる。高速大容量の5G通信で高精細映像を転送できるため、顔分析の精度も高められる。
もう1つ、早期の実現が見えている技術の例が「VR車いすレース」である。5Gの高速大容量通信や低遅延といった特徴を生かして、離れた場所にいる人同士で、パラスポーツの1つである車いすレースを体験するというもの。参加者は専用のVRゴーグルを装着することで、近未来の東京を舞台としたレースを楽しめる。ワントゥーテン(京都市)という企業と共同で開発を進めている。
将来に向けたサービスの例として、同社ブースで多く見られたのが、自動車に関する取り組みだ。その一例となるのが日産自動車と開発している「Invisible-to-Visible」。これは車のセンサーとクラウドなどを用いて、ドライバーには通常見えない場所にある要素を可視化する技術。会場ではその技術を用いた新しい移動体験として、5GとAR技術を活用して遠隔地にいる人を3Dアバターとして車の中に登場させ、あたかも一緒に乗車しているかのような体験を実現するデモを実施していた。
医療分野の取り組みもある。「モバイルSCOT」は、東京女子医科大学などが開発したIoT技術を活用したスマート治療室「SCOT」に、5Gを取り入れ、手術の精度を高めるというもの。手術室から、5G経由で高解像度映像を転送することで、遠隔地の専門医から手術の様子などを確認しやすくする。高速大容量だけでなく、低遅延という5Gの特性を生かし、手術中の様子を遅延のない4K映像で伝送することにより、遠隔地から的確な指示ができる。
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