今やあらゆる業界でAI(人工知能)を活用することが当たり前になりつつある。誰もがAIを使って新しいビジネスを創り出す時代。そのときに必要となるのは、何が得意で何ができるのか、今後はどう進化していくのかを見通す「AIの新常識」だ。仕組みと勘所を、博士が新任助手にやさしく指南する。

製造や工事の現場だけでなく、マーケティング・消費者のサポート・製品開発まで、あらゆる業界でAI(人工知能)を活用することが当たり前になりつつある
製造や工事の現場だけでなく、マーケティング・消費者のサポート・製品開発まで、あらゆる業界でAI(人工知能)を活用することが当たり前になりつつある
柔裸瑠(にゅうらる)博士
クロトレ大学教授。コンピューターの黎明(れいめい)期からAI一筋で研究をしてきた。最近ついに還暦を迎える。昔は鬼博士と呼ばれていたが、最近は丸くなってきた。
助手のアミ
ある中堅ベンチャー企業で社長秘書をやっていたが、まったく新しい道を進もうと、クロトレ大学の助手として転職してきた。学生のころから数学や理科系は苦手。

はかせー。私の知り合いで、会社を経営している人がいるんだけど、その会社で今度AIを導入したいんだって。博士AIの専門家だよね。相談に乗ってくれない?


もちろん、いいよ。でも、そもそも君、AIって何だと思ってるのじゃ?


AIって人工知能のことだよね。人工知能っていうんだから、人間の代わりにいろんなことを判断してくれるんじゃないの? 人間と違ってミスをしないイメージかな。


うーん。それはAIに詳しくない人がよく抱きがちなイメージじゃが、今のAIでは、人間の代わりにいろんなことを判断はできないのじゃ。


なんだ、そうなのか。AIが急速に進歩したってよくニュースでやってるから。


ここ数年で、AIの一分野であるディープラーニングが急速に進歩したのは事実じゃ。では、その辺りを順を追って説明していこう。


1950年代から存在していたAI

 AIはArtificial Intelligenceの略。ではそのAIとは一体何だろうか。人によってAIの定義はさまざまで、一概には定義しづらいが、あえてざっくりとまとめると「言語の理解、データの分析や推論、形の認識といった、人間並みの知的な処理をコンピューターで実現すること」だろう。

 AIは決して新しい概念ではない。1950年代に提唱された言葉であり、60年以上もの歴史を持つ、コンピューターサイエンスの一大分野なのだ。

 AI研究の歴史は、決して平たんな道のりではなかった。最近のAIブームは、第3次AIブームと呼ばれている。このことからも分かるように、これまでに2回AIブームが起こっている。しかし、そのたびにAIの限界が露呈し、AIに冬の時代が訪れていた。

AIは決して新しい概念ではなく、60年以上もの歴史を持っている
AIは決して新しい概念ではなく、60年以上もの歴史を持っている

 例えば、1970~80年代には、現実の問題を解くために開発されたエキスパートシステムが登場し、第2次人工知能ブームが到来した。

 エキスパートシステムは、専門家の知識を機械に教え込むことで、問題を解かせようとするもの。例えば、専門医の知識をコンピューターに覚え込ませ、患者の症状を尋ねていくことで、病名を絞り込むことができる。しかし、エキスパートシステムはルールが明確な事例にしか対処できず、現実の複雑で曖昧な事例には対応できないことが分かったため、ブームが終わった。

エキスパートシステムの仕組み
エキスパートシステムの仕組み
専門家の知識を機械に教え込むエキスパートシステムの研究が一時期進んだが、複雑な事例に対する柔軟な対応ができない問題があった

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