特集の最終回はASKULのUXデザインを取り上げる。重視するのはLOHACOと同様に「なんでもアスクルさん」を増やすこと。ただし購入金額が多いユーザー企業が「なんでもアスクルさん」ではない。さまざまな商品を幅広く買ってくれる相手こそ、ロイヤルティーの高い顧客とみている。

「仕事のために注文するユーザー企業にとって、ASKULはショッピング用のECサイトとは違い、業務ツールといえる存在になる。ASKULのUXデザインでもユーザー企業の生産性向上につなげるため、いかに効率良く商品を検索・発注できるかを重視している」。こう語るのは執行役員BtoBイノベーション本部CX、データサイエンス、ECテクノロジーの宮澤典友本部長だ。
BtoCのLOHACOのUXデザインが取り扱う商品の特性やイメージを重視しているのに対し、業務ツールとなるASKULではサイトの使い勝手が最大のポイント。コンセプトは「15秒で買えるサイト」だ。商品を選択しても購入の画面で迷わないよう、分かりにくい説明文をすっきりさせたり、ユーザー企業の担当者が購入時の画面で、本来は半角で入力すべき項目を全角で入力した場合でも、半角に自動変換したりする機能もある。この他、過去の注文履歴の商品を表示させるなど、細かい改修は頻繁にあるという。改修の際に複数の画面アイデアがあり、どれがいいか判断がつかない場合は、ABテストを実施してユーザー企業に聞く。こうした改修を実施するうえで重要な点は、いかにユーザー企業の意見を分析し、課題を的確に抽出できるかにある。
ロイヤルティーの高い「なんでもアスクルさん」
ユーザー企業の意見を聞くため、ASKULでは注文完了後の画面上などでサイトに関するアンケートを実施。集めた声を分析して画面の改修に生かしている。「この機能が使いにくい」「もっと、こうしたほうがいいのではないか」といった意見は毎月、数千件に上る。共通する内容を抽出し、画面上のボタン配置など簡単に対応できる案件については、すぐに取り組む。
ただし、意見の多さだけで改修するかどうかを決めているのではない。重視するのは、ASKULの利用が多い「なんでもアスクルさん」と呼ぶ優良顧客の声だ。「なんでもアスクルさん」とは、ASKULで取り扱う商品を数百のカテゴリー別に分類した中で、数十のカテゴリー商品を購入してくれたユーザー企業のこと。しかし「なんでもロハコさん」と異なり、購入金額でセグメントしていない。購入金額だけで見ると、大手のユーザー企業に偏ってしまうためだ。たとえ中小事業所でも、幅広く購入してくれるほうがASKULに対するロイヤルティーが高いと判断し、そういう「なんでもアスクルさん」のニーズに応じて改修に臨んでいる。
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