特集6回目はオフィスなど「仕事場」向けの商品を扱うASKULのものづくりを取り上げる。販売する約600万の商品のうち、2019年5月にはPB商品が9000以上になり、ASKULの売り上げの約36%を占めた。ヒットの理由はレビューなどからユーザー企業の声を聞き、こまめに開発に反映させているからだ。

「LOHACO Water(ロハコウォーター)410ミリリットル」。ラベルのないペットボトルでシンプル。商品情報はキャップのシールに記載している
「LOHACO Water(ロハコウォーター)410ミリリットル」。ラベルのないペットボトルでシンプル。商品情報はキャップのシールに記載している

 オフィスや医療機関、建設現場など事業所向け用品を扱うBtoBのASKULでも、独自開発の商品を強化している。自社で企画するプライベートブランド(PB)が中心だが、LOHACOのようにメーカーに提案して開発する場合もある。

 1995年に「価格×シンプル×機能性」をテーマにしたボールペンやファイルなどのPB商品を初投入したときは、わずか7アイテムだった。ボールペンは、24年たった2019年でも売れ続けるロングセラー商品だ。05年には「アスクルのおもてなし」をテーマに、北欧デザインのPB商品を販売した。

 12年には、それまでのオフィス向けの文具や事務用品、生活用品などに加え、工場や生産現場などで使われる消耗品や補修品の市場に参入。「現場のチカラ」をテーマに、現場向けのパッケージデザインで価格重視の「ベーシック」と、品質・機能の「プロ仕様」の2ラインで100アイテムを発売した。

 19年5月にはPB商品は9000アイテム以上になり、約600万の商品を販売するASKULでは数は少ないものの、売り上げの約36%を占めるまでになった。毎年600~800アイテム程度を開発しており、今後は1万アイテムにまで引き上げる計画だ。

ユーザー企業の声を3つのポイントに集約し、デザインで解決

 なぜPB商品が人気なのか。それはLOHACOでの開発と同様に、ユーザー企業の担当者の声を、こまめに反映させているからだ。PB商品の開発ではアスクルのコールセンターに届く意見の他、ネット上のレビューやランキングなどを分析してヒントにしている。特に重視するのは、現状の商品に対する不満の声だ。「ユーザー企業の不満は宝の山といえる」とアスクルBtoBカンパニーBtoBイノベーション本部エクスペリエンスデザイン リサーチ&ビジネスサポート、カスタマーエクスペリエンスの温泉さおり統括部長は話す。

 開発チームはまずレビューの声などを分析し、「既存商品のこうした点が不満なのでは」「こうしたニーズがあるのでは」といった仮説を立てる。その後、検証するためユーザー企業にアンケートを実施したり、実際に訪問してヒアリングをしたりする。ASKULの紙のカタログの更新は毎年2月と8月なので、掲載に間に合うように開発作業を進めていく。掲載までの期間が決まっている以外は、LOHACOもASKULも開発スタイルに違いはないようだ。

 LOHACOと同様にPB商品は「店頭で目立たなくていい」という点がデザイン面での大きな特徴。派手な色づかいも大きなロゴも必要ない。だから「ユーザー企業の利便性を高めるにはどうすればいいか」に集中して開発できる。

 例えば、透明なパッケージでラベルもないというユニークなデザインのミネラルウオーター「LOHACO Water(ロハコウォーター) 410ミリリットル」は、LOHACO用に2リットルの商品として16年5月から発売していたが、ユーザー企業の声を聞いてASKULのPB商品として改良したものだった。500ミリリットルの一般的なペットボトルより小さめの410ミリリットルにしたのは、「1回の会議で飲みきれない」「外出時に持ち運ぶには重い」という声があったからだ。そこで飲みきりが可能で、軽く小さめのサイズにして18年7月に商品化した。