楽天は手数料に見合ったサービスを提供する

 第三の陣営は、楽天ペイメント(東京・世田谷)が運営する「楽天ペイ」である。19年3月に、コード決済の「楽天ペイ」と電子マネーの「楽天Edy」、それに個人間送金などを可能にする「楽天キャッシュ」、ポイントサービスの「楽天ポイントカード」の機能を統合した、新しい楽天ペイアプリをリリースした。図1で示すように、楽天スーパーポイントを軸に、キャッシュレスの世界でも楽天IDを持つ楽天会員にとって利便性の高い、楽天経済圏を築こうとしている。

 小売店への姿勢はある意味でPayPayとは真逆だ。3%台の決済手数料を負担してもらう代わりに、手数料に見合ったサービスを提供するという方針を堅持する。具体的には、「楽天のメディアパワーを使って加盟小売店を紹介して送客する、小売店側でユーザーに対して割引クーポンを配信できるようにする、アプリ上の小売店検索機能を充実させて個店に対して送客できるスキームを構築する、といったサービスを検討している」(楽天ペイメントの小山幸宏ペイメント戦略室室長)という。言い換えれば、個店を開拓できるかどうかは、楽天ペイメントが用意する小売店向けサービスが、小売店にとって充実したものになっているかどうかにかかってくるわけだ。

 JR東日本が運営する非接触決済の電子マネー「Suica」との提携(20年春開始予定)を機に、自社のみで市場を開拓する姿勢から、「他のキャッシュレス決済手段とオープンに提携するという姿勢に転換した」(小山氏)という。もっとも、誰とでも手を組むわけでなく、「楽天ペイアプリを使ってSuica対応の交通機関を利用できたり、対応端末で決済できたりする」というような、楽天会員にとってのメリットがはっきり見える提携だけに応じ、後は従来通り、小売店の開拓もユーザーの加入促進も、自社グループで進めていくことになりそうだ。

信金の営業力を駆使して個店開拓に励むOrigami

図2 スマホ決済&ポイント完全マップ その2
図2 スマホ決済&ポイント完全マップ その2
出所:日経トレンディ19年8月号

 これら3つの陣営には規模で劣るが、既存のクレジットカード会社や銀行が、これまでキャッシュレス決済を普及させることができなかった中小・零細のいわゆる個店を開拓するという意味で見逃せないのが、図2で示すOrigami(東京・港)が運営する「Origami Pay」だ。

 Origamiは18年に信金中央金庫と資本業務提携を結んで、全国の信用金庫を味方に付けた。地場の小売店と取引している全国の信金職員の営業力で、地方のいわゆる個店を地道に開拓し、Origami Payの導入店を増やしている。

 また決済プラットフォームそのものを「提携Pay」として企業に開放し、企業のアプリに組み込んで利用しやすくしている。企業は提携Payを利用することで、自社アプリを利用する会員に、Origamiや信金などが開拓した小売店で利用できるQRコード決済機能を提供できるわけだ。

 地域の金融機関を巻き込むという取り組みでいえば、みずほ銀行が19年に始めたQRコード決済サービス「J-Coin Pay」には約60の地方銀行が参加しているし、日本電子決済推進機構がデビットカードの決済インフラを活用して同年10月にサービスを始める予定のQRコード決済サービス「Bank Pay」には、1000以上の金融機関が参加する予定だ。

 しかし、実際に地方で商売する地場の小売店と最も取引しているのは、地銀ではなく、地元に根を張る信用金庫や信用組合である可能性が高い。その意味で、Origami Payの存在感は無視できないといえる。

 今は3大陣営プラスOrigamiと、そこに属さない独立系に分かれて、中小・零細、特に地方の小売店の開拓にまい進しているQRコード決済サービス事業者だが、今後もさまざまなプレーヤーとの間で合従連衡が起こる可能性は高い。まずは10月に予定されている消費増税のタイミングが、1つの節目になるだろう。

(写真/新関雅士)