カフェ「ROBOTS.COFFEE」に続き、コワーキングスペースとビールバーを併設した銭湯が売り上げを順調に伸ばしている。経営者は初めて開業した店舗でありながら、キャッシュレス決済とスマートロックを活用し、効率的な店舗運営を実現。完全キャッシュレスに踏み切っても客足は全く止まっていない。

1階にあるビールバーでは、クラフトビールや日本茶を提供する
1階にあるビールバーでは、クラフトビールや日本茶を提供する

 東京・代々木上原にある「BathHaus(バスハウス)」は、銭湯とコワーキングスペースとビールバーを組み合わせた従来にない店舗だ。店のコンセプトは「仕事して、ひとっ風呂浴び、ビールを1杯ひっかける」。1つの施設でオンとオフを切り替えられる快適さが地域住民から支持され、利用者を増やしている。

 オープンしたのは2018年12月。当初は決済手段として現金とクレジットカードに対応していた。ところが、19年1月にはキャッシュレス決済のみ、つまり完全キャッシュレスに切り替えた。

ビールバーの奥にある銭湯は、ヒノキとタイルの2タイプがあり、1週間ごとにそれぞれ男湯と女湯に割り当てる
ビールバーの奥にある銭湯は、ヒノキとタイルの2タイプがあり、1週間ごとにそれぞれ男湯と女湯に割り当てる

 同店を運営するchill & work(東京・渋谷)の榊原綾香社長は、「切り替え直後はどのような反響があるか不安だったが、批判的な意見は一切なく、好意的な反応がほとんど」と話す。

 榊原社長は、仕事などで米国をはじめ海外に行くことが多い。その際、現地でキャッシュレスの便利さを実感していた。日本でも増えたらいいと思い、自分の店を完全キャッシュレスにすることにした。ただ、各種申請などに予想以上の時間がかかり、オープン当初はやむなく現金決済を可能にしていた。

 現在は、現金決済を不可にした一方で、多くの決済手段に対応し、ユーザーの利便性を高めている。具体的には、決済代行サービスのリクルートの「AirPay」を利用し、クレジットカードと交通系ICカードの他、コード決済の「LINE Pay」「PayPay」、非接触決済の「QUICPay」「iD」など20種類の方法で決済可能にしている。Air Payの決済手数料は、決済方法により異なり、金額の3.24または3.74%。iPadかiPhoneを自前で用意する必要はあるが、アプリや決済端末、サービス利用料などの月額の固定費、振り込み手数料は不要なので導入しやすい。

 同店での利用割合は、クレジットカード4割、交通系ICカード4割、iDなどの電子マネー1割、LINE PayやPayPayなどQRコード1割となっている。「クレジットカードと交通系ICカードは、多くの人が持っていて決済時にスマホアプリを立ち上げる必要がないので利用する人が多い。ただ若い人は交通系ICカードに多くの金額をチャージしていないことが多いので、後払い方式のQUICPayとiDにも対応した」と榊原社長は説明する。

 取材時には、近所に住む女性が来店。コーヒーを注文し、クレジットカードで決済しつつ、榊原社長に銭湯の料金などを確認していた。

リクルートの決済サービス「AirPay」を導入した
リクルートの決済サービス「AirPay」を導入した
近所に住む女性(手前)がコーヒーを飲むため来店。クレジットカードで決済した。次に来るときは銭湯を利用したいという
近所に住む女性(手前)がコーヒーを飲むため来店。クレジットカードで決済した。次に来るときは銭湯を利用したいという

 キャッシュレス決済を導入するには、通常、店舗運営者がクレジットカード会社などと契約を結ぶ。BathHausのように多数の決済会社と契約を結んだり、決済業務のやり取りをしたりするには、多くの時間と手間がかかるが、決済代行サービスを利用することで作業負担を軽減した。

 キャッシュレス決済を導入すると、一般的に店には利用した分だけ決済手数料の支払いが発生し、飲食店などがキャッシュレス化する際のハードルになっている。しかし、榊原社長は「完全キャッシュレスにして、現金を扱わないことで得られるメリットが決済手数料を支払うデメリットを上回る」と語る。

 店舗では営業時間後にレジ締め作業をする。通常、この作業は、店長が1時間ほどかけて実施する。これがAirPayのレジアプリを使うことで、レジ締め作業が不要になる。また、現金決済では、つり銭を用意するため、開店前に銀行に行く必要がある。完全キャッシュレス化により、この作業から解放される。つり銭が不足するのではないかという心配もいらない。

 メリットは他にもある。レジアプリには、月別や商品別の売り上げの他、日別の客数を自動で集計する機能がある。「これらの数字は、メニューのラインアップや集客イベントなどを考える参考になる」(榊原社長)