企業や個人間で商品を共有するシェアリングサービスの利用者が増えている。車、ファッション、スペースと対象物は広がり、2018年度の市場規模は過去最高に。飲食店の空き時間をシェアリングする事業では、その敷居の低さでユニークな店が次々と生まれ、まるで「新規事業の実験場」だ。そこにビジネスチャンスが眠っている。
いつかは飲食店を開きたい。そうした夢を持つ人は多い。その起業のハードルを劇的に下げるサービスが注目を集めている。飲食店が営業していない空き時間だけ、店をほかの飲食店開業希望者に貸し出すという店舗のシェアリングサービス「軒先レストラン」だ。
空きスペースのシェアリングサービスを手掛ける軒先(東京・千代田)と吉野家ホールディングスという異色のタッグが共同で運営する。2018年5月28日スタートで、貸し出し可能な店は235店(19年5月末時点)。既に累計で71店がオープンを果たした。21年度末までに貸し出し可能な店舗数を1万店まで増やすことが目標だ。
「飲食店の開業には通常、内装などの設備がすべて撤去されたスケルトンと呼ばれる状態から店を作ると1店舗当たり、1000万~2000万円のコストが掛かると言われている。既存の設備をそのまま使う『居抜き』でも300万円は掛かる」(軒先レストランを担当する吉野家ホールディングスのグループ企画室 特命担当部長の武重準氏)。
それが軒先レストランを利用すれば月々の利用料を支払うだけで、借りた店の厨房機器などをそのまま使える。設備投資や敷金、礼金の負担無しで飲食店を開業できる(利用料には水道光熱費も含まれる)。店を借りた側は、集客のために看板などを新たに建物に取り付けることは出来ない。代わりに店の看板類に取り外しが簡単なPOPを貼り付けたり、SNSを活用したりする。
店が借りられる時間帯は、午前6~8時から午後15~16時までが多い。店を貸す側の業態としては、昼間に空いているバー、居酒屋が多く、借りる側はカレー、カフェ、麺類の開業希望者が多い。面白いところでは、タイ料理店から店を借りて、和食の小料理店を開くといったケースもある。
軒先レストランの役割は、空き時間に店舗を貸し出したい飲食店オーナーと開業希望者のマッチングと、その後の運営を円滑に行うためのサポートだ。店舗の借り手が、貸し手の飲食店に迷惑をかけないために火災などに対応する保険も用意している。当事者同士の面談などを経て契約がまとまれば、借り手が支払う月額の利用料のうち20%分を軒先レストランが受け取る。
新ビジネスの実験場
店を貸す側のメリットとしては、店を閉めている時間帯に貸し出すだけで、新たな収入が得られることだ。ちなみに店の利用料は貸し手が自由に決めて提示するため現在の利用料の最高月額は東京・銀座の50万円、最安値は東京・王子の3万9960円だ。
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