企業や個人間で商品を共有するシェアリングサービスの利用者が増えている。車、ファッション、スペースと対象は広がり、2018年度の市場規模は過去最高に。現代人が抱えるスマホの電池切れへの恐怖が、モバイルバッテリーのシェアを後押しする。依存度が高い商材を見つければ、インフラ化が狙える好例だ。
「現代の消費者は充電中も手元にスマートフォンがないと、“禁断症状”にでもなったかのように落ち着かない」――。
そう話すのは、スマートフォン向けのモバイルバッテリーのシェアサービス「ChargeSPOT」を展開するINFORICH代表取締役の秋山広宣氏だ。同社は15年創業で、企業のSNSマーケティング支援事業を手掛けているが、17年に香港でモバイルバッテリーのシェアリングサービス事業を買収。18年4月から日本に逆上陸する形でサービスを始めた。
同社が国内でバッテリーを貸し出すスポットは、19年6月時点で4500カ所にもなっている。既に国内47都道府県全てにスポットを設置した。設置場所は飲食店やコンビニエンスストア、駅、公共施設にまで広がっている。代理店なども活用し、スポットを19年中に1万5000カ所まで増やすことを目指している。
INFORICHの自社調査では、国内のモバイルバッテリーの貸出機設置数で同社のシェアは95%にもなる。強みは買収した香港の事業者がモバイルバッテリーを自社で開発・製造していたため、日本向けの機材の開発・製造を迅速に実施できたことが挙げられる。
父親が香港出身の秋山氏は、中国語(広東語)が話せる。モバイルバッテリーのシェアサービス発祥の地である中国本土の動向をずっと追っていたのが速やかな事業展開に生かせた。急成長を狙うスタートアップ企業らしく当然、上場を目指している。既にサービス開始の地、香港と日本に加えて、台湾やタイにも進出済みだ。
渋谷区や小田急が導入する意外な理由
ChargeSPOTでは、スマホの電池残量がゼロになってからでも利用に必要なアプリの導入から貸し出しの手続きまでができるように、バッテリーの貸出機には小型のタイプを除き、スマホの電源の1%までは無料で充電できる機能が付いている。こうした配慮は「中国のモバイルバッテリーのシェアリングサービスにはない点」(秋山氏)で、日本の消費者のこまやかなニーズに応えたものだ。これも自社で機材を開発・生産しているという強みがあってのことだ。
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