審査員4人の評価は?

 今回のマーケター・オブ・ザ・イヤーの審査員を務めたのは、クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏、エステー執行役エグゼクティブクリエイティブディレクターの鹿毛康司氏、イトーヨーカ堂執行役員営業本部副部長兼販売促進室長の富永朋信氏。4人の講評は以下の通り。

クー・マーケティング・カンパニー代表取締役 音部大輔氏
マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞はワークマン土屋常務に決定!(画像)
「ワークマンプラス」はワークマンに見向きもしなかった一般層を取り込むことに成功したとのことだが、コアファンの行動をうまく管理し、その家族などを取り込んだことも大きいだろう。インフルエンサーを活用し、「バイク乗り」といった固有のセグメントにうまく訴求できたと思われる。高価だったアウトドアウエアを民主化した、という点では良いパーパス(大義、社会的意義)も実現されている。『ボヘミアン・ラプソディ』は歴史ある業界のなかでデータに基づいたターゲット設定の実績が機能していて素晴らしい。コアファンに注力することで世の中ごと化し、音楽だけでは取り込めなかったであろう人々を魅了し、クイーン市場を再構築できた。「バスタブクレンジング」は風呂掃除にかける労力を解放したと考えると、社会的にも意義深い。
早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏
マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞はワークマン土屋常務に決定!(画像)
「ワークマンプラス」と「ルックプラス バスタブクレンジング」は極めてマーケティング的で、手本になる事例だ。特にワークマンプラスは見せ方を工夫するだけで顧客セグメントを変え、元の業態まで伸ばしている究極の成功例。デカトロンとの“西宮戦争”を演出して注目を集めた点も巧みだ。一方、バスタブクレンジングは、「風呂掃除=こすったり、腰をかがめたりするのが当然」と諦めていた消費者に対し、「こすらなくていい新方式」とうたって、潜在的な不満解決につなげた点が革新的。コアファンからその周辺のファンへと順次ターゲットを変えていくことでムーブメントを生み出した『ボヘミアン・ラプソディ』も、マーケティング手法としては出色だ。
エステー執行役エグゼクティブクリエイティブディレクター 鹿毛康司氏
マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞はワークマン土屋常務に決定!(画像)
PayPayは多数あるQRコード決済のなかでずば抜けることができ、キャッシュレスの代表格になった。100億円は広告費と考えれば普通だが、それをそのまま宣伝に使うのではなく、消費者に還元することでコミュニケーション力を高めた。こういうことが1回でもやれたらすごい。「ワークマンプラス」は、ファッション性は重視しないから手ごろなアウトドアウエアが欲しいという新たな市場ニーズを発見し、ファッションブランドともスポーツブランドとも異なる軸を作って新顧客を生み出した。コア価値を勇気を持ってしっかり打ち出し認識されたことが素晴らしい。「ルックプラス バスタブクレンジング」はまさにマーケティングの王道。こすらなくても洗える、洗浄液が広くいきわたるといった「製品」にとどまらず、家事の負担を軽くするという明快なベネフィットを提示して「商品」に仕上げた。
イトーヨーカ堂執行役員営業本部副部長兼販売促進室長 富永朋信氏
マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞はワークマン土屋常務に決定!(画像)
「ワークマンプラス」『ボヘミアン・ラプソディ』「PayPay」は社会現象になって、新しいSomethingを確立した。特にワークマンプラスは新たなサブカテゴリ-を切り開き、アパレル界のスーパードライみたいな存在になるかもしれない。本当の意味で新市場創出と言えるのはワークマンプラスだけといえる。『ボヘミアン・ラプソディ』はこの映画によってちょっと変なバンドというイメージだったクイーンが、史上最高のバンドとしてリポジションされた。まずコアファンを狙い、その熱狂がクイーンを知らなかった人にまで広がったのは、アプローチした方法や手順が正しかったからだろう。「PayPay」はキャッシュレス決済=Suicaなどの電子マネーという状況を変えるためにはすごく奇抜で影響力のある何かが必要だと判断し、100億円の影響力を最大化したのは立派。