広告オークションの仕組みを理解すれば、アドテクノロジー(アドテク)の基礎は身に付いたも同然。ただ、実際のネットマーケティングの現場では、やみくもに落札しても成果には結びつかない。適切な相手に対し、どうターゲティングをするのか。先輩社員「ヒロセ」が新人の「ユカ」にレクチャーする。

広告オークションでは最も高い入札額が、そのまま落札額にならないこともある点に要注意
広告オークションでは最も高い入札額が、そのまま落札額にならないこともある点に要注意
先輩社員「ヒロセ」
ネット広告やデジタルマーケティングに精通する先輩社員。新人ユカの教育係になった。見た目はクールだが、ネット広告の話になると熱くなって止まらなくなる。
新人社員「ユカ」
ネット広告会社に新卒で入ったばかりの新人女性社員。元気とやる気は人一倍あるが、難しい用語は苦手。ヒロセのボケに対して絶妙なツッコミをする。

前回から引き続き、広告のオークションとターゲティングの関係性について説明していくぞ。復習はばっちりかな。


適切なターゲットを選んで入札をすることで、全体のコストを抑えながら広告を掲載できるんでしたね。


その通り。まずはそこまで理解できていればOKだ。


入札や落札の手続きはすべて機械的に自動化しているわけですよね。何かのきっかけで必要以上に広告の値段が上がったり、下がったりしないんでしょうか。


広告オークションのシステムは、そうしたことを防ぐ仕組みも備えているんだ。


1位の入札額でも落札できない可能性

 広告業界が健全に成り立つには、需要側(広告主)と供給側(Webメディア)のバランスが重要です。広告主は「良い広告枠を安く買いたい」、メディアは「自社の広告枠を高く売りたい」と考えるため、この関係はトレードオフです。

 一方が過剰に利益を求めれば市場は成立しません。そこで、覚えていただきたいキーワードが「フロアプライス」と「セカンドプライスビッディング」です。

 フロアプライスとは、Webメディア側で設定する最低落札価格のことです。これを下回る入札額の広告は、たとえ広告オークションで入札額が1位であったとしても、掲載されません。つまり、メディアの収益を確保するための仕組みです。

 メディアは低単価の広告表示を抑制することにより、広告枠を別途用意していた無期限で掲載できる純広告などの別の広告に回すことができます。

最低落札価格(フロアプライス)を設定しているオークションもある。入札額が基準に満たない場合は誰も入札できない
最低落札価格(フロアプライス)を設定しているオークションもある。入札額が基準に満たない場合は誰も入札できない

 セカンドプライスビッディングとは、広告枠の価格がむやみに高くならないように落札価格を抑制するための仕組みです。これが導入されている広告オークションでは、1位の広告主が落札できるのは通常と同じなのですが、その落札価格が1位の入札額ではなく、「2位の入札額」+「1円」となります。また、フロアプライス以上の入札額が1件しかない場合は、落札額がフロアプライス+1円となります。

セカンドプライスビッディングでは、入札で1位の値段を付けた広告主が落札するが、落札価格は「2位の入札額」+「1円」となる
セカンドプライスビッディングでは、入札で1位の値段を付けた広告主が落札するが、落札価格は「2位の入札額」+「1円」となる

 このような仕組みで、広告オークションはマーケットを健全に保っているのです。

実際はもっと複雑……だから面白いネット広告

 連載の第3回で「“基本的には”このオークションの入札額で掲載される広告が決まります」と書きましたが、実際はより複雑なオークションをすることもあります。例えば「Google広告」のオークションは単純な入札額ではなく、品質スコアという独自指標に基づく広告スコアで掲載順位が決まります。

広告スコア=入札額×品質スコア

 ここで品質スコアとは、米グーグルが決めている指標で、推定クリック率、広告の関連性、ランディング(飛び先)ページの利便性の3つによって10段階で評価されます。つまり、入札額が高くても品質スコアが低ければ競争力は低くなります。反対に入札額が低くても、品質スコアが高ければオークションに勝利することが可能なのです。

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