広告への入札単価を瞬時に決める広告オークションが登場したことで、ネット広告市場は一挙に広がった。広告主とWebメディアをつなぐシステムは、どんな仕組みで入札を受け付けているのか。アドテクノロジー(アドテク)に詳しい先輩社員「ヒロセ」が新人社員「ユカ」にレクチャーする。

アドテクの進化により、ネット上で掲載されている広告の多くは、サーバー同士のオークションで「何を」「いくらで」掲載するかを決定している
アドテクの進化により、ネット上で掲載されている広告の多くは、サーバー同士のオークションで「何を」「いくらで」掲載するかを決定している
先輩社員「ヒロセ」
ネット広告やデジタルマーケティングに精通する先輩社員。新人ユカの教育係になった。見た目はクールだが、ネット広告の話になると熱くなって止まらなくなる。
新人社員「ユカ」
ネット広告会社に新卒で入ったばかりの新人女性社員。元気とやる気は人一倍あるが、難しい用語は苦手。ヒロセのボケに対して絶妙なツッコミをする。

ネット広告を理解する上で欠かせないのが、「広告オークション」と「広告ターゲティング」だ。この2つについて前後編で解説していくぞ。


はい! 両方とも前回までに勉強したインターネット広告の歴史の中で出てきましたよね。


おおっ、きちんと復習しているな。広告オークションとは、広告主の入札によって表示する広告を決定する仕組みのこと。では、広告ターゲティングは?


ええっと、ユーザーの属性や興味、関心に合った広告を届けることですよね!


基本はその通り。今回はまず広告オークションの仕組みを詳しく説明していこう。


純広告は固定額、運用型は変動額

 かつてインターネット広告の多くは「純広告(枠売り広告)」と言われるものでした。純広告は「広告の掲載先」と「広告の掲載期間」を固定額で買う広告と言えます。例えば、Webメディア側が「ニュースサイトのトップページ右上にある広告欄を1週間で30万円」といった形で提示し、広告主が買い取って掲載します。

 純広告では、事前に掲載先と掲載期間が保証されます。その半面、広告の表示回数やクリック数がその時々のメディアのアクセス数に左右される、1回の広告出稿額が高くなるなどのデメリットもあります(現在は、広告の表示回数やクリック数を保証するメディアもあります)。

 その後、広告オークションの仕組みが登場し、広がっていきました。オークションによって掲載される広告を運用型広告と呼びます。これは「広告の表示回数」や「広告のクリック」、動画の場合は「広告の視聴」を買う広告と言えます。つまり、CPC(コスト・パー・クリック、広告1クリックに要した費用)やCPM(コスト・パー・ミル、1000回表示当たりの広告コスト)という単位で売買されるのです。

 広告オークションが最初に導入されたのは、2002年ごろから登場した検索サイトのキーワードに連動して表示されるリスティング広告です。現在では、「Facebook」や「Twitter」などのSNSの広告や、各種Webメディアのディスプレー広告(広告枠に表示するバナー広告)の表示にもオークションが利用されています。

純広告と運用型広告の違い
純広告と運用型広告の違い
担当者同士の交渉でネット広告の掲載を決定する純広告に対し、ネット上のオークションで掲載を決定する広告は運用型広告と呼ばれる

 広告オークションでは、表示回数やクリック単位で広告枠を購入できるため、純広告と比べて少額での出稿が可能です。効果を確かめながら配信期間中に予算を調整できます。

 とはいっても、人気が高いものほど競争率が高まり、落札額が上がっていくのは「ヤフオク!」などのネットオークションと同じです。同じCPCやCPMでも価格は常に変動しているのです。“基本的には”入札額の大小によって、掲載される広告が決まります。この“基本的には”の意味は、次回に説明します。

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