2015年ごろに通信技術の進歩や「YouTube」や「Facebook」といった動画を扱うWebサービスが広がり、動画広告の存在感が高まってきた。その先に広がるネット広告の新市場とは何か。アドテクノロジーに精通する先輩社員「ヒロセ」が、新人「ユカ」に必須知識を解説する。

ネット広告やデジタルマーケティングに精通する先輩社員。新人ユカの教育係になった。見た目はクールだが、ネット広告の話になると熱くなって止まらなくなる。

ネット広告会社に新卒で入ったばかりの新人女性社員。元気とやる気は人一倍あるが、難しい用語は苦手。ヒロセのボケに対して絶妙なツッコミをする。

前回に続き、ネット広告について進歩の歴史をたどっていこう。ネット動画を見るのは好きかな?

大好きです! 好きなアーティストのミュージックビデオをつい見てしまいます。気が付くと休日がそれで半日終わってしまうことも……。

動画を再生する前や再生の途中で、動画広告が再生されるよね。

「広告をスキップ」と表示されるけど、面白い広告動画も多いので最後まで見続けちゃうことが多いんです。

そうした動画広告は「インストリーム広告」と呼ばれている。15年ごろにはインストリーム広告をはじめ、ブランディングのための動画広告サービスを提供する事業者が増えてきたんだ。
ブランディングのためのデジタル広告利用が拡大(2015年ごろ~)
アドネットワークに代表される広告ネットワークの事業者は、主にWebメディアの余り在庫(広告を表示できる回数のこと=広告インプレッション)を仕入れて販売しています。それぞれの単価は低いので、アドテク事業者の収益性はそれほど高くはありませんでした。そこでCPM(コスト・パー・ミル、1000回表示あたりの広告コスト)の高い動画広告を販売したいと考える事業者が増えていったのです。
米国では、2012年時点で既に動画広告で30億ドルの規模があり、毎年2ケタ成長している広告媒体でした。日本での動画広告の浸透にはそれなりの時間がかかり、本格的な浸透は2015年後半ごろからだったかと思います。
なぜ、時間がかかったのでしょうか? それには、大きく2つの課題があったと筆者(ヒロセ)は考えています。1つは「動画広告枠の在庫不足」、もう1つが「適切な効果測定方法がなかったこと」です。
アプリ内でも広がる動画広告
当時の動画広告は、動画サイトでの再生前や再生中に配信されるインストリーム広告がほとんどでした。日本で主要な動画サイトと言えば、「YouTube」「ニコニコ動画」「Gyao」などいくつかありますが、海外ではより多くの動画サイトが乱立しています。そのため、日本よりも圧倒的に広告在庫が豊富だったのです。
現在は、SNSや記事メディアなど動画サイト以外でも動画広告を配信できるようになりました。例えば、Webページやアプリのコンテンツの間に表示される「インフィード広告」やバナー内に表示される「インバナー広告」など、インストリーム広告以外の動画広告在庫が増えたことにより、在庫不足問題は改善されてきています。
2012年時点では動画広告のほとんどインストリーム広告でしたが、サイバーエージェント オンラインビデオ総研とデジタルインファクトの共同調査を見ると、インフィード広告がインストリーム広告に迫る市場規模に拡大していることが分かります。
- 「効果測定」が動画を後押し
- 広告業界健全化への取り組みと、新技術による市場の広がり
- 位置情報を活用した広告に期待大
- スマホに次ぐ第3の広告スクリーン
- アドフラウドなど課題も山積
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