「ChatGPT(チャットGPT)」をはじめとする、生成AI(人工知能)に対する注目度は増すばかり。それとセットで語られることが多いのが「この先、自分の仕事はどうなるのか」です。日々の業務で生成AIと接している筆者の鈴木正義さんも、このテーマについて真剣に考えてみました。
AIは広報の仕事を奪うのか?
ここのところマスコミでは「ChatGPT」など生成AIの話題で持ちきりです。実は筆者が勤めるアドビでも、現在「Firefly(ファイアフライ)」という画像生成AI技術を開発中で、「Illustrator(イラストレーター)」などおなじみの画像処理ソフトへの搭載を進めています。
そこで、今回は広報・マーケティングの世界でAIが使われると、一体我々の仕事はどうなるのかについて書いてみたいと思います。少々アドビの宣伝っぽい話も出てしまうかもしれませんが、抽象的な夢を語るよりも生成AI開発企業に籍を置く当事者の考え方をお伝えしたほうがいいと思いますので、具体例の一つとして読んでいただければ幸いです。
まず、生成AIは人間の仕事を奪うのではないか、という懸念の声を聞きます。これに対しアドビでは「あくまでクリエイターの副操縦士」という表現で、この懸念に回答しています。つまり、どのようなクリエイティブを作るのかという意思を持つのはクリエイター本人にしかできないことであり、白紙のキャンバスと完成作品の間を埋める作業をAIが補助するという考えです。
この完成イメージという点が非常に大事です。実は筆者もFireflyを使っていくつかイラストを生成してみました。ところがです。完成したものが良い出来栄えなのかどうか、そもそもデザインのセンスもなければ知識もない筆者には何が正解かが分からないのです。聴衆を魅了する動画や自社のブランドイメージをけん引するような考え抜かれたデザインを作成することは、また違ったレイヤーのスキルです。基本的にこの領域になればプロクリエイターの力が欠かせません。
プレスリリースのようなテキストを生成するAIでも、同じようなことが言えます。前回の連載で筆者の遠藤眞代さんは、AIが生成してくるプレスリリースに対して「より正解に近づける」作業をしていたことにお気づきでしたか。つまり生成AIで「それっぽい」プレスリリース書類は作れても、それが目的にかなっているかどうかの判断は、広報経験者にしかできないのです。
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