大好きなアーティストを熱烈に応援する「推し活」には、広報として学ぶべき点がたくさんあるそうです。その手法もさることながら、発想の自由さに筆者の遠藤眞代さんは大いに刺激を受けたとのこと。ファンコミュニティーに身を置き、自らの推し活を通して、広報の仕事を見つめ直しました。

大好きなアーティストを応援するためなら、想像を超えるような発想も生まれてくる ※画像はイメージ(画像提供:Sam the Leigh/Shutterstock.com)
大好きなアーティストを応援するためなら、想像を超えるような発想も生まれてくる ※画像はイメージ(画像提供:Sam the Leigh/Shutterstock.com)

K-POPの推し活で広報マインドをリセット

 広報の仕事は、「推し活」の延長のようなものです。K-POPのファンダム(熱心なファンの集まり)には、取りまとめ役の「マスター」と呼ばれる人がいる場合があります。ファンダムが音楽チャートのランキングにも影響を与える時代ですが、マスターの人たちは、それぞれの推しの情報をSNSなどを通じて自発的に発信しています。

 マスターでなくても、ボランティアで推しの広報活動をしている方がたくさんいます。例えばTwitterなどでファン投票に関する告知やリマインドを積極的に行ったりするほか、にわかファンの教育(著作権のルールをSNSなどで周知するなど)や、アンチファンから推しを守ったりするのも、活動の一環となっているようです。SNSを眺めてはモチベーションの高さや行動力に感心し、同じ広報活動を行う仲間として刺激を受けています。

 もちろん仕事としてYouTubeなどを使って情報を発信している人もいますし、やり方は多種多様です。とても大きなくくりで見ると、広報やPRをやっている人はプロ、アマチュアを問わず、世界中にたくさんいるのだなと、うれしくなります。こうした活動をファンダムの内側から眺めていると、広報として働き始めた頃の初心に立ち戻ることができるので、私にとってK-POPアーティストの推し活は大切な時間になっています。

純粋な推し活が生む自由な発想

 ざっくり推し活の目的は主に2つ。純粋に推し活をしている当人が楽しむこと、そして推しのアーティストが成功すること。基本、ただそれだけです。ルールがないので手段は自由。正直なところ、仕事として広報をしている人間から見るとグレーゾーンの行為も見受けられますが、純粋な気持ちから生まれる自由な発想は羨ましくもあります。誰もが超本気なので、かなわないなぁと思うこともしょっちゅうです。

 推しの成功をバックアップする方法としては、グッズを買って売り上げに貢献するのもあり。時間を削って音楽チャートなどでの順位を上げるためにApple Music やSpotifyで新曲を再生しまくるのもありです。推しのブランディングを目的として、社会貢献に対する考えをバックアップし、誰のファンで、さらにどのファンコミュニティーなのかが分かるよう、名前で寄付をするのもよく見受けられます。フォロワーの多いマスターなどがSNSを通じてファンに寄付を募り、それをまとめて寄付するという流れを見たことがあります。

 同じようなやり方を使って、ファン一同として韓国ドラマの撮影現場にキッチンカーを提供し、出演者やスタッフが軽食やコーヒーを楽しめるようにすることもあります。キッチンカーには推しの顔写真が張られているので、出演者やスタッフは誰のファンから提供されたのかがすぐ分かります。その様子が推しのInstagramやTwitterに投稿されると、それを見たファンが拡散するという流れです。

 もう少し大規模なブランディングとしては、米国ニューヨークのタイムズスクエアなどにあるデジタルサイネージの広告枠を買って推しの誕生日をお祝いしたり、推しの写真などで飛行機をラッピングしたり、なんてこともやってのけます。

 こうした大胆な手法を目の当たりにするたびに、自分のやってきたことは型にはまりすぎていないかと考え込んでしまいます。広報のやり方は自由で、その可能性も無限大なはずなのですが……。

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