今、広報なら気にかけておきたいキーワードの1つが「トーカビリティ」です。ざっくり言えば「話のネタになりやすい話題」といったところでしょうか。単なるニュースも、視点の工夫で話題性がアップします。そのコツを解説します。

次々と人々の間で広がりを見せる話題。広報ならうまく仕掛けたいものです (画像提供:TORWAISTUDIO/Shutterstock.com)
次々と人々の間で広がりを見せる話題。広報ならうまく仕掛けたいものです (画像提供:TORWAISTUDIO/Shutterstock.com)

トーカビリティについてのワークショップを開催

 2019年に始まったこのコラムも、いよいよ4年目になろうとしています。皆様、今後もよろしくお願いします。

 さて、先日我がアドビ広報チームでワークショップを開催しました。テーマは「トーカビリティのあるストーリーを作ってみよう」というものです。

 はて、トーカビリティとは。ちょっと耳慣れない言葉ですが、「Talkability」と書きます。直訳すると「話しやすさ」です。ただ、広報の文脈で用いられる際は、「人から人に語られるに足る話題性のある話」ということになるでしょう。

 トーカビリティのあるストーリーには少なくとも2種類あると思います。1つは「面白い、意外な話」です。例えばビートルズの未発表曲が発見されたら(発見されてませんよ、ちなみに)、これはビッグニュースです。ニュースを見た人は誰もが「へえー」となるでしょう。ただ、それをわざわざ人に伝えるかというと、よほどのファンでもない限りニュースを見て終わりではないかと思います。

 しかし、その発見された未発表曲が、これまでの作品とは全く違うメッセージだったらどうでしょうか。あるいは最近の社会課題、例えば地球温暖化問題への警鐘を鳴らす内容だったらどうでしょうか。これは本当にビートルズの曲なのか、どうしてこの問題を予測できていたのか、などなど、誰もがそのニュースのコメント欄やSNSで意見を発信したくなるのではないでしょうか。

 こうした2次的な話題の広がりは、時としてニュースそのものを超える影響力を持つ場合があります。これが「トーカビリティのあるストーリー」です。

 これを企業の発表に置き換えて考えてみましょう。

 少々古い例になりますが、音楽配信や電子書籍が登場した頃に、ある会社が後発で参入したとします。そこで単に「我が社も音楽配信と電子書籍を始めました」という発表だけであれば、後発ということもあり「へーそうなんだ」で終わるニュースかもしません。

 しかし、ここにサービス開始の背景として「米国では大手書店が閉店した」「CDショップの数は年々減っている」といったファクトを提示すると、いよいよ時代の潮目が変わるのかという社会性が出てきます。そうなると、この件についてSNSで自分の意見を投稿する人もいるでしょう。これがトーカビリティのあるストーリーになる、ということの例になるかと思います。

 ただ気を付けなければならないのは、このニュースを見た人が「気の毒な小売店とそれを飲み込む大企業」という論調に走ってしまうことです。ネット上で意見が交わされる場合、善悪二元論に単純化されてしまいがちです。良かれと思ってトッピングした情報が自社を悪者にしてバズらせてしまう、という結果になりかねません。トーカビリティのあるストーリーは発信した企業の手を離れ、全く立場の違う人にもメッセージを発信してもらうことが狙いなので、それだけ暴走してしまう可能性もあります。

 広報活動はマスコミに記事を出してもらうことがゴールと考えがちですが、本当はその先で社会現象を起こしたい、というのが狙いのはずです。この発表がニュースになった場合、どのような反応が社会に起きるかをシミュレーションする上でも、トーカビリティについて考えておく意味があります。

 一方でこの音楽配信のケースは別の見方もできます。実はこれが2つ目の「トーカビリティのあるストーリー」でもあります。それは「モノを買って所有する」という人間が長年続けてきた営みとの関係です。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2022年12月19日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

第1章 広報しか知らないマスコミの素顔
第2章 取材対応こそ危機管理の要
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