肩書は自分のポジションを相手に示す大切な記号。どの企業も似ていますが、突拍子もない名称に変えてみたらどうなるでしょうか。特に社長のような社を代表するスポークスパーソンの場合、思わぬ効果が生まれることも。実はその「肩書」に込めた思いが企業の本当の姿を表しているのかもしれません。

俺についてこい! 日本メーカーの牙城に攻め込むぞ! ※画像はイメージ(画像提供:Fotokvadrat/Shutterstock.com)
俺についてこい! 日本メーカーの牙城に攻め込むぞ! ※画像はイメージ(画像提供:Fotokvadrat/Shutterstock.com)

 唐突ですが、皆さん会社での「役職」はどのように名刺に書いてありますか。多くの企業では「マーケティング本部マーケティング部CCグループGTMシニアマネージャー」のように、社内の事情が分からない人にはほぼ意味が通じない、長い役職名になっているものです。実はこれがマスコミ泣かせなのです。要するに、記事でその人を紹介するとき、役職名が長いと文字数を使ってしまいますし、そもそも何をしている人なのか何も伝わってこないからです。

 今回はそんな厄介者である肩書を、コミュニケーションでうまく使っている会社のスポークスパーソンの例を紹介したいと思います。

ソニーやパナソニックの牙城に挑むスタートアップ

 皆さん「RED」というビデオカメラメーカーをご存じでしょうか。知っているという方は、恐らく広告や映像関係のプロの方ではないでしょうか。REDは正式にはレッド・デジタル・シネマカメラ・カンパニーといい、米国のカリフォルニア州に拠点を構える新興の高性能ビデオカメラメーカーです。

 かつて筆者は、2006年に米国で開催されたイベントでREDのJim Jannard(ジム・ジャナード)さんという方にお会いしたことがあります。この時ジムさんから頂いた名刺には、日本語で「反乱軍の首領」という意味の肩書が書いてありました(元の英語を失念してしまいました)。はて、初めて見る肩書ですが、いかにも何か意味が込められていそうです。

 かのジムさん、実はサングラスなどで知られる米オークリーの創業者としても有名な方です。そのオークリーの経営を人に譲り、「自分はこれからビデオカメラの仕事をするんだ」と言って始めたのがREDで、要するにジムさんはREDの社長というわけです。

 しかし、この時ジムさんの名刺には「CEO(最高経営責任者)」とか「President」という肩書が書いていなかったので、周りの人に教えてもらうまで、私はこの方が社長だとは気が付きませんでした。当時業務用のビデオカメラと言えば、ソニー(現ソニーグループ)、パナソニック、キヤノンといった日本の大企業が独占している市場で、REDはこの牙城に挑むスタートアップだったのです。

 映像という高い技術が求められる市場に門外漢が参入し、しかも販売ルートや広告の物量ではこれらの大企業の足元にも及ばないREDは、面白い存在ではありますが、市場で存在感を示すのは難しいでしょう。周囲も、ニッチプレーヤーを目指すのだろうというのが大方の見立てでした。

 しかし、ジムさんは「反乱軍」と名乗ることで、出来たてほやほやの会社ではあるものの、その視座としては大企業のライバルに割って入るだけの勝算をもって参入しているのだよ、という創業の意志を、このユニークな「肩書」に込めていたのです。実際REDの製品は画期的で、ジムさんのこうした広報的発想もあってか評価はうなぎ登り。今ではCM撮影や映画撮影では欠かせない存在となっています。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2022年12月19日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

第1章 広報しか知らないマスコミの素顔
第2章 取材対応こそ危機管理の要
第3章 経営者が知っておくべきマスコミ対応の落とし穴
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