疑問があれば、すぐに解決しておきたいのが広報というもの。それが経営者から出た話だとしても、問題点は潰しておかなければ大きなトラブルの“火種”となりかねません。時に否定的な指摘に対して「生意気だ」と思われるかもしれませんが、リスクを最小限に抑えるために広報は発言すべきなのです。

経営者にとって耳の痛い話かもしれませんが、広報の指摘には耳を傾けてください。それがリスクマネジメントです ※画像はイメージ(画像提供:Andrey_Popov/Shutterstock.com)
経営者にとって耳の痛い話かもしれませんが、広報の指摘には耳を傾けてください。それがリスクマネジメントです ※画像はイメージ(画像提供:Andrey_Popov/Shutterstock.com)

分からないことはクリアにしたい

 辻つまが合わない、疑問点がある――そんなときは、すぐさまクリアにせずにはいられないのが広報の性分ではないでしょうか。結果として「重箱の隅をつつく面倒臭いやつ」になります。当然、日常生活でも厄介です。

 娘関係のある説明会に出席したときのことです。その説明会では、受付をした時点でその日の資料が配られるスタイルでした。いつもの習性もあり、着席してから説明会が始まるまでの間に資料に目を通さねばと、大急ぎで読み始めました。

 資料の中に、申し込み専用フォームへ誘導するQRコードが印刷されていたので、すかさずスマホで読み取りました。リンク先に記載してある手順に沿って進めていくと、回答するのが難しい設問を見つけました。そこで周りの人に聞いてみたのですが、みなさん答えは出せず。仕方なく空欄にしておいたまま、説明会がスタートしました。

 さて、最後の質問コーナーになっても“その設問”に関する話が出てきません。空欄のままではやっぱり気持ちが悪いですし、他の出席者の方も答えられないようです。それならばと、手を挙げて質問することにしました。娘から「説明会では目立たないようにしてほしいと」言われていたので、説明会が終わった後でこっそり聞けばよかったのかもしれません。しかし、広報をなりわいとする私は、クリアにしたいという気持ちをどうしても抑えきれませんでした。習慣というのは厄介なものです。ただ、母親としては失格かも……。

広報が口を出す必要はあるのか?

 経営者や事業担当者から聞いた情報について、仮に何か引っかかる点があったとしても、とりあえずのみ込むのが当然。質問なんてあり得ない。広報の管轄ではない事業に対して、事細かに口出しするのはいかがなものかと思う方もいるでしょう。

 質問や意見をするなら、持ち帰ってよく考えてから……と言われそうですが、広報担当者が「あれ?」と引っかかるような情報に接するタイミングの多くは、社外に出す直前です。特に役員インタビューの最中や、発表の可否を判断する打ち合わせなどのときです。正直、そこを逃せば次のタイミングが来ることはほとんど期待できません。

 内容に引っかかる点が出てきた場合、相手が誰であろうと勇気を出してクリアにしておくのは、広報のリスクマネジメント機能を有効にするための重要なスキルです。しかし大抵の場合、面倒だとあしらわれます。

 ソニー時代を思い出してすごかったと思うのは、一見すると面倒な情報開示前に、広報側と壁打ちをするプロセスがあり、ネガティブであっても広報の意見を求めるという共通認識があった点です。外の世界に出てからソニー時代と同じようにやってみて、多くの企業では「広報が重箱の隅をつつくのはお門違い」と考えられていることに気づきました。リスクマネジメントは他の部署の仕事で、広報は問題が起きたときに対応すればいい、といった感じでしょうか。ですから、広報が指摘しても自分たちの理屈で押し通す。広報に報告せずに情報を開示してしまうなんてこともあります。世間から一流と見なされている企業が、そのクオリティーを担保しているのには、相応の理由があるのだと再認識した点でもあります。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

第1章 広報しか知らないマスコミの素顔
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