会社の不祥事や様々な危機に広報として備えておくのは当然ですが、何でもかんでも「謝罪」で済ませてしまうのも会社にとってマイナスです。そうならないためには、判断がブレないような「基準づくり」が大切。そこで考えたいのが、不祥事に伴う「失敗コスト」です。

広報としてこういう事態だけは絶対に避けたいが…… ※画像はイメージ(画像提供:metamorworks/Shutterstock.com)
広報としてこういう事態だけは絶対に避けたいが…… ※画像はイメージ(画像提供:metamorworks/Shutterstock.com)

謝罪会見の練習って必要なの?

 会社で不祥事発生、すわ謝罪会見! ――と思ってしまうのは、我々がテレビやネットニュースで頻繁に「謝罪会見」を見過ぎているせいではないでしょうか。あるいは、危機対応に関する本には、高級腕時計はするなとか、質疑応答はこうしろ、会場はここのホテルを使えなど、こと細かに謝罪会見のやり方が書かれているので、ついそのガイドに沿って会見の準備をしたくなってしまうからかもしれません。

 しかしこれは、例えば朝のゴミ出しで夫婦げんかをしたときに、いきなり離婚裁判のシミュレーションをし始めるようなものです。一足飛びにそうなる前に、事態を収束させるオプションはいくらでもあります。

 実際の広報の前線に立っていると、実に多くの「危機未満」の事案に遭遇します。謝罪会見で社長にミッキーマウス柄のネクタイをさせない準備ももちろん大事ですが、こうした「危機未満」の状況を冷静に対処すること、要は初期消火を行うノウハウを蓄積することがより現実的でしょう。今回は広報の実務ガイドとして読んでいただくのはもちろんなのですが、経営幹部の方が危機対応の実際を理解する上での参考にしていただければと思います。

 私はIT関連企業数社で広報を担当して、ハードウエアを扱う企業にも在籍していました。そこで最もわかりやすい製品不良での危機対応について、私の経験を一般化してお話しします。

 残念ながら工業製品である以上、どんなメーカーでも不良品の発生を完全にゼロにはできません。ここで冷静にならなければいけないのは、「単なる製品不良」と「危機対応すべき製品不良」の切り分けです。その基準は「傾向性があるのか」と「安全性の問題はあるか」の2点です。

 傾向性があり、かなりの割合で不良品が発生するようではそもそも信用問題になりますから、これは広報発表などを考えるべきです。また、数こそ少ないけれども使用にあたって危険性があり、それを使っている人が特定できないようであれば、これも広報発表をすべきでしょう。

 仮に致命的な不良でなかったとしても、いかにもユーザーの声をないがしろにしているような態度に見られてはいけません。特にSNSなどで既に炎上している場合、上記の傾向性や安全性とは別に、説明責任を求められている、という軸でも判断が必要となるでしょう。

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