企業に所属しているビジネスパーソンであれば、仕事や業績の評価は避けて通れません。それは広報部門も同じですが、その方法が意外と悩ましいそうです。メディアに露出した「記事数」は1つの分かりやすい指標ですが、それだけで評価してしまっていいのでしょうか。今回は「広報の評価」を取り上げました。

広報パーソンの評価はどうあるべきか ※画像はイメージ(画像提供:Davizro Photography/Shutterstock.com)
広報パーソンの評価はどうあるべきか ※画像はイメージ(画像提供:Davizro Photography/Shutterstock.com)

悩ましい広報の評価方法

 例年9月といいますと、多くの会社で上半期の締めの月です。会社業績、部門成績、そして個人業績のレビューのタイミングという方も多いのではないでしょうか。つい先日も知り合いの広報から、「広報の評価方法ってどうしている?」と尋ねられました。社内では間接部門の広報ですが、意外とこの業績評価に悩んでいる広報マネジャーは多いようです。

 実は広報の業績評価やKPI(重要業績評価指標)について考えてみると、広報という仕事がビジネスのどんな局面で活躍を求められているかが見えてきます。そこで今回のテーマは「広報の業績評価」についてです。

 広報の成績の分かりやすい指標は、メディアに露出した「記事数」です。紙媒体が主たる成果だった牧歌的な時代は「何件の記事が出たか」「どれくらいの面積の記事だったか」ということを細かく積み上げて、これを広報の「成績」としていた時代がありました。ネット時代の現在でも、多くの会社がこの方法で広報の目標管理を行っているようです。記事数を「X%増やす」というKPIは、一見適切なように思えます。

 しかし現実には、自社製品が露出できる可能性のあるメディア数というのは、案外限られています。また、一度ニュースになってしまうと、同じネタで2回ニュースになることはまずありません。真面目に何年も活動している広報であればあるほど「記事数の伸びの上限」は迫ってきているもので、「もうこれ以上は無理」と音を上げたくなります。

 記事数の伸長率がKPIとして適切でない一方、広報には「当たり年」というものがあります。例えば、米アップルが日本でiPhoneを発売したとき、あるいはレノボがNECとのジョイントベンチャーを設立したとき、アドビの最近の例ではAI(人工知能)の「Adobe Sensei」を発表したときなどでしょうか。

 こうした画期的な新商品(iPhone)や業務提携(ジョイントベンチャー)、新技術(AIエンジン)のような局面に会社があるとき、社会はそれらについて「もっと知りたい」と思うでしょう。こうした「知りたい」というニーズがある以上、マスコミは記事を書きます。テレビや新聞の取材がばんばん入り、経済誌でも特集が組まれ、広報の評価もうなぎ登りです。

 懸命の広報活動の甲斐もあり、発表した製品は会社の主力製品へと育っていったとしましょう。ところが、この時期になると記事の「取れ高」のほうは、むしろ徐々に減っていきます。これは主力製品となり、ある程度知名度が上がったことで大衆の「知りたい」という欲求が満たされたためであって、決して広報がさぼったわけではありません。この状況に対して「うちの広報は根性がない、成績ダウンだ」と評価されてしまっては、何とも不本意です。

 広報が単純に右肩上がりで記事数の目標を設定しても、評価する会社の立場としては、同じ農地で耕作している農民に対し、毎年年貢をつり上げる大名のようになってしまい、あまりいい末路が待っているようには思えません。下手をすると最も露出の稼げるタイミングで「来年しんどくなるから適当にやっておこう」と三味線を弾く広報も現れかねません。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

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