広報の仕事に興味を持つ若い人は少なくありません。きっと華やかなイメージがあるからでしょう。そんな人に筆者の鈴木正義さんは厳しい現実を突きつけます。どうやら“おしゃれビジネスパーソン”の世界は広報にはなさそうです。では、どのようなキャリアの人が広報として即戦力になり得るのでしょうか。
突然ですがこのたび、NECパーソナルコンピュータ(レノボ・ジャパンを兼務)からアドビの広報に転職いたしました。このコラムは新しい職場でも続けられることになりましたので、今後もよろしくお願いします。
さて、個人的なことはどうでもいいのですが、今回はちょっと広報という仕事のキャリアについて考えてみたいと思います。
「広報をやってみたい」という人の期待
実は筆者は結構転職をしていまして、現職のアドビ、NECパーソナルコンピュータおよびレノボ、その前がアップルなどあり、新卒で入ったのは鈴鹿サーキット(現ホンダモビリティランド)です。この中の最初のホンダモビリティランドで、いきなり広報に配属されました。従って筆者は広報という仕事を外から眺めて「やってみたいなあ」と思う機会はなかったのですが、周辺の若い知人から「広報に興味があります」と言われることがあります。
この連載のかなり初期に、広報はイメージされているよりも泥くさい仕事なので、キラキラしたすてきな仕事と思うと幻滅しますよ、みたいなことを書いたかと思います。外から何となく広報の仕事を眺めている人には、もしかすると次のような感じに見えているのではないでしょうか。
朝10時、丸の内にあるオフィスに出社。途中で買ったスターバックスコーヒーのラテを片手に、朝のルーティーンの記事チェック。その後、いつも通りパリっとしたファッションの先輩たちと朝のミーティング。ランチは同期の仲間たちと前から気になっていたイタリアンに。午後からは社長のインスタ動画撮影。その後、急なテレビ取材で自分がテレビカメラの前に出ることに。今日はタフな1日だったから、帰りにはジムでいつもより多めに汗をかいちゃおっと……。
すみません、自分で書いていてちょっと吐き気がしてきました。
あくまでTikTokなどから集積したイメージですが、間違いなく言えることは、これは広報の仕事がしたいのではありません。おしゃれビジネスパーソンになりたい、その“舞台”として広報という仕事はこうだと思い込んでいるだけです。実態を全く見ていません。
実際は以下の通りです。
朝8時、満員電車の中で社長から着信。慌てて途中下車すると「今朝の日経、見てみろ」と言われ、その場でアプリを立ち上げ記事を見てみると、競合会社のいい感じのインタビュー。口の中はカラカラで、会社に着くなり、一息つく間もなく対策会議。上司や先輩が顔面蒼白(そうはく)となっている中、社長取材の売り込みを最優先でやることに。
早速、日本経済新聞の記者に電話すると「今、取材中です」とガチャ切りされてメンタルポッキリ。午後の取材用資料に修正が入り、ランチは自席でコンビニのおにぎり。取材ではせっかく用意した資料を無視され、開発部長の不規則発言が始まった。その後、記者への訂正とおわび、補足資料を送信し、終わったころにはもう夜8時。
ちっ、そう言えば今日は資源ごみの日だったなと思い出しつつ、空腹を抱えてつり革にぶら下がるようにして帰路に就くと、またしても社長からメッセージが……。
恐らく、このパターンの広報のほうが「あるある」なのではないかと思います。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー