NECパーソナルコンピュータがゲーミングPC市場に参入しました。しかし後発で、なおかつ「NEC」のブランドイメージはどうもゲームとそぐわない。記事にしてもらうのは厳しそうです。そこで筆者の鈴木正義さんはある“奇策”に打って出ました。果たしてうまくいったのでしょうか。

ゲーミングPCの発表会でテレビ取材を受けるNECパーソナルコンピュータの役員。右端は筆者の鈴木正義氏
ゲーミングPCの発表会でテレビ取材を受けるNECパーソナルコンピュータの役員。右端は筆者の鈴木正義氏

参入が難しいゲーミングPC市場

 日経クロストレンドでもたびたび取り上げられているように、世界的にeスポーツがブームとなっています。海外でプロ選手が高額な収入を得るなどの話題は、皆さんも一度は耳にしたことがあるでしょう。この競技で使用されるパソコンは「ゲーミングPC」といって、各パソコンメーカーにとって新たなドル箱として期待されています。

 先日、我がNECパーソナルコンピュータ(NECPC)も、満を持してゲーミングPC「LAVIE GX」を発表しました。しかし、賢明なる読者の皆さんはお気づきかと思いますが、NECブランドといいますと企業のITシステムや通信インフラ、あるいはコンビニのレジなどでおなじみの“お堅い”イメージです。クールな雰囲気のあるゲーミングPC市場に、NECPCが後発で参入するのは簡単ではありません。

 そこで我々はある“奇策”を用いて広報することにしました。今回はその舞台裏をお話しします。

 まず、日本のゲーミングPC市場について簡単に背景を説明しましょう。実はeスポーツが世界的なブームといっても、我が国は任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメントのお膝元ということもあってか、ゲーミングPCは長年ニッチで、自作PCや、秋葉原のPCショップが組み立てた「ショップ系」といわれるブランドが強い市場でした。見方を変えれば、大手メーカーが参入するだけの市場が形成されていなかったとも言えます。

 NECPCはこの小さな市場に参入し、ショップ系ブランドなどとシェア争いをしても、恐らく過当競争になって市場を壊してしまうだろうと考えていました。そのため、ゲーミングPC市場そのものを拡大させる施策を打つことが、我々がゲーミングPC市場に参入するうえで必要でした。

PC-98の資産「レトロ」で勝負

 そんなわけで、今回の商品企画は「ゲームをこれから始めたいという初心者」をターゲットにすることに決まりました。裾野は広いですし、先行メーカーとそうかぶることもないでしょう。またNECという安心感のあるブランドイメージをPCゲーム初心者への強みとして生かすため、24時間のサポートなどもセットしました。

 ただ、発表に当たって「サポートがいい」というだけではちょっとパンチがないといいますか、マスコミがわざわざ大きく取り上げるほどのネタにはなりません。そこで思いついたのが「PC-98 40周年」でした。

 お若い読者の方のために説明すると、「PC-98」は1982年に登場したNECのパソコンで、日本国内で圧倒的なシェア1位を獲得し、「国民機」とまでいわれたそうです。そのPC-98人気を支えたコンテンツの一つがゲームだったのです。2022年はPC-98誕生から40年、ゲーム用途で人気だった家庭向けモデルのPC-98の販売終了から24年。いわば今回の新商品は「PC-98のDNAの復活」というわけです。どうでしょう、少し光明が差してきましたね。

 そこで、1980年代にはやったゲームを現代のパソコンで動かす「プロジェクトEGG」という特殊なアプリを提供しているD4エンタープライズ(東京・中央)とのコラボも同時に発表することになりました。

 実際リッチな高解像度のゲームに慣れている現代のゲーマーにとって、ギザギザのピクセル絵にピコピコという電子的な効果音はかえって新鮮らしく、昔のゲームはオールドファンだけでなく幅広い世代に人気があるようです。また、ゲームに限らず昨今「レトロブーム」という現象も起きていますので、マスコミとしては取り上げやすい要素がそろっています。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

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