情報をメディアに売り込んでも、それが記事や番組になるかどうかは露出するまで分かりません。ある意味、広報の仕事とは「不確実の塊」と言えるかもしれません。そこにはゲーム的要素もあります。手持ちのカードを、タイミング良く切りながら記事掲載へと結び付ける。そこがまたたまらないのです。

多くのメディアが欲しがるようなポテンシャルの高い情報を切り札にして、記事掲載を勝ち取れ! ※画像はイメージ (イラスト:ne2pi/Shutterstock.com)
多くのメディアが欲しがるようなポテンシャルの高い情報を切り札にして、記事掲載を勝ち取れ! ※画像はイメージ (イラスト:ne2pi/Shutterstock.com)

広報の結果を事前に予想するのは不可能

 広報の売り込みは「不確実」なものです。実際メディアに露出されるまで、その結果がどうなるか分かりません。私の知る限り、いかに大企業であっても、どんなに広報スキルが高くても、どれほどメディアとの信頼関係が築けていたとしても、広報はメディア露出を100%約束できませんし、内容の確約もできません。天災で記事の掲載が中止になることもありますし、最後の最後で内容変更や掲載しないという判断が下ることもあります。メディア側には、広報がどうすることもできない力が働くことがあるからです。

 私は広報として手を尽くして、自信満々であったとしても、「いやー、まず掲載は確実だと思うんですが……」と最後に「思う」と付けてしまいます。確信していたとしても、落ち着かないものです。クライアントや事業担当者から、「こいつ自信ないんだな」と見られているだろうなと思いながらも、「絶対」なんて口が裂けても言えません。

 今回はなぜ広報の売り込みが不確実なのかを理解していただくため、広報の仕事における“ゲーム的な要素”について紹介したいと思います。

 広報が情報をメディアに売り込んで露出を獲得するまでの過程は、「スーパーマリオブラザーズ」のようにステージを攻略していくゲームと、カードゲームを足して2で割ったような感じです。人によって捉え方はさまざまでしょうから、こんな考え方の人もいるのだな、くらいに思いながら読んでください。

手持ちのカードを使って掲載を勝ち取れ!

 では、「広報ゲーム」の概要を説明しましょう。これは誰か他の相手と競うゲームではありません。手持ちの「カード」を上手に使って、ゴールとなる「記事露出」を目指すものです。相手(社内やメディアなど)を説得しながら道を切り開き、ゴールに向かって突き進んでください。

 このゲームでは記事が露出すれば基本的にOKなのですが、ゴール時の「点数」も問われます。点数は客観的な視点で決定します。進度スピードに加え、難易度、タイミング、羨ましいと思われるような内容であるかどうかの度合いで加算されていきます。

 プレーヤーはもちろん広報です。ゲームに参加するためには「カード」が必要で、これはプレーヤーの広報が準備します。手持ちのカード枚数や使用回数の制限はありません。事前に情報収集を行い、人の名前、商品やサービス名といった、相手となるメディアが興味を持つと思われる内容や、その内容が持つバリューを示す点数を書き込みます。この点数は、相手(メディア)に応じて変更しても構いません。

 ゲームを構成するステージ(ニュース)と相手(メディア)は、プレーヤーが自由に選択できます。その組み合わせによって、難易度が変わります。ステージには、必ず出現する相手もいます。ステージを取り巻く環境設定、相手の立ち位置などは固定で、プレーヤーが変更することはできません。カードを全部使い切らなくても問題ありません。途中でカードの追加や、一度に複数枚のカードを使うことも可能です。ステージ、相手、自身で用意したカードの特性を熟知しておきます。

 世の中の動きによってカードを取り巻く環境は刻々と変化しますから、動向を見極めながら、カードを出すタイミングを吟味しましょう。日々の広報業務と同様、並行して複数のゲームに参加できますが、同時に似たような相手とプレーすると、それぞれが干渉して破綻することがあるので注意しましょう。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2022年12月19日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

第1章 広報しか知らないマスコミの素顔
第2章 取材対応こそ危機管理の要
第3章 経営者が知っておくべきマスコミ対応の落とし穴
第4章 掲載を勝ち取るマスコミへのアプローチ
第5章 天国と地獄が交錯するプレス発表会
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