広報なら、こちらが狙ったフレーズやキーワードをメディアの「見出し」で使ってもらいたいもの。もちろん、見出しはメディア側にとっても読者や視聴者を引きつける最重要項目ですから、広報の思い通りにはいきません。しかし“採用確率”を上げる手はあります。その成功事例を紹介しましょう。

筆者の鈴木正義氏が広報業務をサポートするラグビーチーム「クリーンファイターズ山梨」(写真左の白のユニフォーム)の試合風景
筆者の鈴木正義氏が広報業務をサポートするラグビーチーム「クリーンファイターズ山梨」(写真左の白のユニフォーム)の試合風景

今年のスローガンは「覚悟」ッス!

 「結局この1年、覚悟が足りなかったんですよ」

 たびたびこのコラムにも登場し、私が広報業務をサポートする社会人ラグビーチーム「クリーンファイターズ山梨」のキックオフ集会は、こんな監督の厳しい一言で幕を開けました。それもそのはず、2021年シーズン東日本の社会人リーグであるトップイーストリーグで8戦全敗、入れ替え戦にも敗れBクラスに降格となってしまったのです。この話が広報のコラムとどう関係してくるのか、けげんに思う読者の方もいると思いますがもう少々お付き合いください。

 地方の市民チームが大敗の屈辱から立ち上がり、猛練習の末に並みいる大企業のチームを打ち破って上位のリーグに昇格する。まるで少年マンガのようなストーリーです。スポーツチームに限らず、こうした「物語」があるブランドというのはつい応援したくなるものです。

 そんなわけでチームの広報担当である私の頭は、常に「どこに物語のパーツが落ちているか」を探しながら活動を眺めています。新年度体制の記者会見を前に選手やスタッフが気持ちを確認し合うキックオフ集会は、広報として注目すべきイベントなのです。

 さて、厳しい雰囲気で始まったキックオフ集会、その後どうなったかと言いますと、選手同士が22年シーズンのチームスローガンを話し合いました。そしていかにも基礎代謝の高そうなチームキャプテンの口から出てきたのはこんな言葉でした。

 「今年のスローガンは、自分らに足りてなかった『覚悟』ッス」

 「クリーンファイターズ山梨物語」が数年後に語られるとき、「22年からチームは変わったんだよね」というように持っていきたいところです。選手の頑張り次第では、今は断片でしかないこのスローガンが後々意味を持つようになってくるはずです。そのためには広報として、「そんなこと言ってましたっけ?」とならないように、このスローガンをどうやって会見でお披露目するか、さらにはどうやって印象に残る記事を書いてもらうかの作戦を立てなければなりません。

 実は今年度は元日本代表で欧州の名門クラブでもプレーしていたクリスチャン・ロアマヌという選手が、鳴り物入りでクリーンファイターズに移籍しました。短期的にはこの大型補強のほうを会見の目玉にしたくなります。しかし、今回の会見の目的は先に述べた通り長い物語の起点となる「覚悟の年」であることの周知です。

 そこで私の内なる目標は、「覚悟」が見出しになれば100点。さらにそこにサブタイトルで「元日本代表など加入」と入れてもらえれば120点としました。目指した通りの見出しを載せてもらう――理屈ではその通りですが、そんなことが本当にできるのでしょうか。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

第1章 広報しか知らないマスコミの素顔
第2章 取材対応こそ危機管理の要
第3章 経営者が知っておくべきマスコミ対応の落とし穴
第4章 掲載を勝ち取るマスコミへのアプローチ
第5章 天国と地獄が交錯するプレス発表会
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