新しい商品やサービスは出合いの場、記者の第一印象がとても大事。最初にネガティブな印象を抱かせては、挽回不可能も覚悟しなくてはなりません。記者に中立的な状態で商品やサービスに向き合ってもらうのは思っているよりも大変です。電話や発表会の案内状のメールから“印象づくり”は始まっているのです。

メディアの記者が商品やサービスと出合う場は最初が肝心。伝える情報を整理して、興味を持ってもらえるような場づくりを心がけましょう ※写真はイメージ(写真提供:Jacob Lund/Shutterstock.com)
メディアの記者が商品やサービスと出合う場は最初が肝心。伝える情報を整理して、興味を持ってもらえるような場づくりを心がけましょう ※写真はイメージ(写真提供:Jacob Lund/Shutterstock.com)

新製品デモ、いまいちの音にがっかり?

 以前、ある企業の商品担当者から「スピーカーの新商品を発表したいから、デモするので来てほしい」との連絡をもらいました。私はこれまで色々な部署の商品担当者に「資料だけ渡されてもプレスリリースは書けません」と口が酸っぱくなるほど言ってきたので、広報発表するかどうかの判断に社内デモはとても重要です。

 8人ほどの椅子が楕円テーブルの周りに並べられ、席の後ろを通るのがやっとというような会議室。机の真ん中にスピーカーがちょこんと置いてあり、その横には音源を再生するためのパソコンが。さあ、デモのスタートです。

 「遠藤さん、今回の商品は前の機種より大分音が良くなりました。聴けば分かっていただけると思います」と担当者。こちらもそこそこ長くオーディオ関連の広報に携わり、機器や音の良しあし、聴き方などを目いっぱいたたき込まれた身です。聴き分けられるだろうと己を信じていました。

 ところが聴き始めると、「ん???」と頭の中でクエスチョンマークが大量発生。とても音が良くなってるようには思えません。耳が悪くなったのかも……と不安がよぎります。

 納得いかないので、「他の楽曲とか、もう少し分かりやすいサンプルがあれば聴きたいんですけど」とお願いしたのですが、相手から言葉が出てこない。「もしかして何か設定とか触ってないですか?」と質問したところ、こんな返事が。

 「あ、ばれました。時間がなくて、とりあえず机の上にスピーカーを置いて聴いていただいたのですが、このスピーカーは特性上、背面に壁がある前提で、反射音も込みで設計されたスピーカーなんです。なので本当は壁に寄せて聴いてもらいたいのですが、この部屋だと壁に寄せるのに色々と物をどかさないといけないから、とりあえず机の上に置いてデモしちゃいました」

 それでは新製品の実力を正確に判断できません。「え~っ!」と、あからさまがっかりした私を見て、担当者は急きょセッティングを変更し、デモをやり直してくれました。確かに音は良くなっていましたが、最初に聴いた印象のためか、感動は少し目減りしてしまいました。第一印象は深く心に刻まれるため、覆すのはなかなか難しいものですね。

 しかし、もしこれが記者へのデモだったらどうでしょう。新製品の本当の良さを理解してもらえないままネガティブな印象を植え付けることになり、取り返しのつかないことになりかねません。今でも発表会のたびに、このときの経験を忘れないよう肝に銘じています。

 商品デモに対するメディア側の第一印象だけでなく、商品を紹介する企業側の人たちの態度も記者の印象に直結します。広報主催イベントでの立ち振る舞い、発表会の冒頭で話す内容などは特に気をつけたいものです。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2022年12月19日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

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