新聞記者が原稿を出稿しなければならない夕方は、広報にとって要注意の時間帯です。そんな時に新人広報が下手な売り込みでもかけようものなら、トラウマになりかねません。恐ろしい「魔の時間帯」ともいえますが、「チャンスタイム」に変えることもできます。

電話が怖い……新人広報にとって恐ろしい「魔の時間帯」とは  ※画像はイメージ(画像提供:metamorworks/Shutterstock.com)
電話が怖い……新人広報にとって恐ろしい「魔の時間帯」とは  ※画像はイメージ(画像提供:metamorworks/Shutterstock.com)

新聞記者への電話連絡は貴重な経験

 4月といえば異動の季節です。このタイミングで広報配属の辞令をもらい、「果たして広報とはいかなる仕事か」と検索した結果、この記事に行き着いたという方がいらっしゃるかもしれません。世の中には様々な広報の「いろは」を書いた記事や書籍が出ていますので、“まっとうなアドバイス”を求めるなら、ぜひそうした情報に当たることをお勧めします。

 当コラムは「風雲!」と銘打っている通り、広報業務でどういったトラブルがあるのか、どこに落とし穴が待っているのかを、実体験に基づいて書き連ねることを自ら任じております。そこで今回は、新任広報の方の役に立つ“風雲話”をしてみたいと思います。

 広報になれば頻繁に顔を合わせることになる新聞記者たちは、とにかく多忙です。日中携帯電話に連絡しても「ただいま電話に出られません」というSMS(ショートメッセージサービス)が返ってくればまだいいほうで、ぶっきらぼうに「取材中です」と(あるいは無言で)ブチっと切られてしまうこともあります。かと言ってメールを送ってもなしのつぶてです。これはなかなかメンタルにぐさりとくるものがありますが、後述するように、この経験は広報として非常に貴重なものとなります。

 そうしてブチっとやられてさてどうしたものかと思っているうちに時は流れ、午後5時、6時という時間になります。広報以外の職種の方にも共感いただけるかと思いますが、つかまりにくい忙しい人に連絡をとる場合、夕方というのは定例の会議なども終わっているので、案外つかまえやすいものです。

 「さすがにこの時間なら取材も終わって、会社にいるだろう……」

 そう思って編集部に電話すると、呼び出し音がするかしないか瞬時のうちに電話がつながります。

 「はい! 〇〇新聞経済部」――何やら切羽詰まった感じの人物が電話に出ました。背後からは通信社からの速報を知らせる“ピーコーピーコー”という発信音が鳴り響いています。

 「いつも大変お世話になっております。NECパーソナルコンピュータの鈴木です、〇〇さんはいらっしゃい……」

 「お待ちください」(話を遮ったことを謝りもせず電話は保留に)

 電話を転送する保留音の後、ようやくご本人登場。

 「はい」(ちょっと落ち着かない感じ)

 「あーどうも、鈴木です」

 「はい」(全くこちらに愛きょうなど振りまく余裕なし)

 「先日ちょっとお話しした工場取材の件なんですけどね」

 「はいはい、はい」(いよいよ切羽詰まる)

 「日程なんですが……」

 「あ、すみません、後でもいいでしょうか」

 「え? あ、そうで……」

 「ガチャン」

 賢明なる読者の皆さんはお気づきかと思いますが、恐らくこの記者は今、日中取材した記事を書いています。それも締め切り前の相当切羽詰まった状態で。

 皆さんも高校時代に「テストの残り時間、あと5分」と先生に言われた際、ふと見ると解答用紙の半分が未着手だった経験がありますよね(ありませんか?)。そのテストの追い込みの解答時のように、切羽詰まった締め切り前に「NECパーソナルコンピュータの広報さんから電話だよ」と電話を回されたら、ちょっと冷静ではいられなくなりますよね。ちなみに電話を取り次いだ人も同じく原稿の追い込み中で、一刻も早く自分の原稿に取り掛かりたいので、こちらへの対応もぶっきらぼうなわけです。

 部署にもよりますが、大体午後5~6時というのはその日取材した記事を書いている途中で、何らかの事実確認を取材先の企業にしなければならないタイミングです。早く原稿を仕上げないと相手の広報もつかまえられなくなってしまう。この後デスクのダメ出しがあることも計算に入れると、今は一刻の猶予もない。そんな時に、あなたからかかってきたいかにも不要不急の用件の電話……。これは歓迎されない電話になってしまいますね。

 しかし、ぶっきらぼうな記者の皆さんも、恐らく余裕のあるときは非常に紳士的な方たちなのだと思います。

この記事は会員限定(無料)です。

18
この記事をいいね!する