信頼できるニュースはどのようにつくられるのか、メディアを知ることは広報のスキルアップの基本にして究極の手段――。そこで最適な本を紹介しましょう。堅苦しい実務書などではありません。ページをめくるたび、物語に引き込まれていくミステリー小説です。

今回の重要なキーワードは「カラス」です ※写真はイメージ(写真提供:Marcin Perkowski/Shutterstock.com)
今回の重要なキーワードは「カラス」です ※写真はイメージ(写真提供:Marcin Perkowski/Shutterstock.com)

新聞社の「デスク」は本当に灰皿を投げるのか

 突然ですが、読書っていいもんですね。読んで楽しいということもさることながら、本から思いがけず新たな知識が得られると、何だかボーナスポイントを獲得したような気分になります。

 先日『クロウ・ブレイン』(宝島社文庫)というミステリー小説を読みました。これはカラスが人を襲うという事件を取材していた新人記者が思いがけず事件に巻き込まれ、その奥に潜む闇の真相に迫るというミステリーです。本の著者である東一眞さんは現役の新聞記者で、現在も精力的に執筆されている方です。それだけに、主人公の職場である新聞社の状況がむちゃくちゃリアルに描かれています。

 新聞社ってどうやって記事をつくっているのだろう?――誰もが一度は気になったことがあるのではないでしょうか。特に広報関係者であれば、どういうやり取りがあって記事の方針や紙面での扱いが決められているのか、大いに興味のあるところです。そんな方にこの本はお薦めです。新聞社を見学しているかのように、新聞社という組織、記者の心理、そしてジャーナリズムというものについて知ることができます(物語自体はもちろんフィクションですが)。

 あまり書くとネタバレになりますが、話には主人公の上司にあたる「デスク」という役職の人物が出てきます。広報の仕事をしていると、取材した記者が後から追加の質問をしてくることがあります。そのときよく言われるのが「デスクから『ここも聞け』と言われまして……」という言葉です。

 デスクとは取材には行かず、文字通りデスク(机)で記者が書いてきた原稿をチェックし、時に原稿にダメ出しをするベテラン記者のことです。テレビドラマなどに出てくるデスクは、黒い腕カバーをつけて、ヘビースモーカーでとにかく短気で、気に入らない原稿を投げつける、さらにエスカレートすると灰皿も投げると相場が決まっていますが、さすがにこんな人物は現代では問題ありです。そもそも黒い腕カバーをつけた人をここ30年くらい見たことがありません。

 この本に出てくるデスクは、そういうデフォルメされた人物像ではありません。社会部という事件・事故を扱う部署で記事を取りまとめているポジションだけあって、灰皿は投げ付けてきませんが、なかなかタフな人で、主人公が記事を書きたいと言ってもなかなか認めてくれません。

 物語中、主人公がデスクからがつんとダメ出しを食らった後、フォローしてくれるのが主人公の属する「環境班」のキャップです。新聞の各編集部門ではテーマや市場ごとにチーム体制になっていることが多く、主人公が属するのは社会部の中で環境問題を扱う環境班というチームです。ちなみに本書に出てくる「日本新聞」という新聞社では、環境班は社会部内でややマイナーなポジションのようで、社会部のフロアとは異なる階に担当記者たちの机があります。このあたり、細かいようですが現役の記者ならではのリアルな描写と言えるでしょう。

 我々広報としては、担当記者がどんな班の人なのか、どういうタイプの記事を書くことを使命としている人なのかを知る必要があります。誰に情報を売り込むかによって、記事化されるかどうかが変わってきます。

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