この連載をきっかけに誕生した書籍『もし幕末に広報がいたら 「大政奉還」のプレスリリース書いてみた』が大好評です。今回はその中から、日本を変えた“あの歴史的大事件”を題材にしたプレスリリースを紹介します。

夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡――と松尾芭蕉は岩手県平泉で詠みましたが、ここ関ケ原でも武将たちの様々な夢が交錯していたことでしょう…… ※写真はイメージ(写真提供:beibaoke/Shutterstock.com)
夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡――と松尾芭蕉は岩手県平泉で詠みましたが、ここ関ケ原でも武将たちの様々な夢が交錯していたことでしょう…… ※写真はイメージ(写真提供:beibaoke/Shutterstock.com)

 この連載をきっかけに出版した『もし幕末に広報がいたら 「大政奉還」のプレスリリース書いてみた』が早くも増刷がかかり、思いの外、好評をいただいております。歴史的大事件を題材にして広報の仕事を理解してもらおうというむちゃな試みでしたが、多くの読者の方々に喜んでいただき、本当に感謝(ほっと)しております。そこで以前このコラムに掲載しました「広報の手にかかれば、松尾芭蕉だって旅行系の人気ユーチューバー」「1300年前のZ世代に刺さるワザ 遣唐使募集のリリース書いてみた」に続き、今回も本の中から皆さまに楽しんでいただけそうなエピソードを紹介いたします。

『もし幕末に広報がいたら 「大政奉還」のプレスリリース書いてみた』
『もし幕末に広報がいたら 「大政奉還」のプレスリリース書いてみた』
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エンゲージメントゆるゆるの軍団のリーダー

 この本で結構悩んだテーマの一つが「関ケ原の戦い」です。徳川家康、豊臣家、裏切り、後の幕藩体制への影響など切り口が多様で、登場する武将も多岐にわたるため、なかなか絞り込めなかったのです。しかしプレスリリースとして整理してみると、この戦は、豊臣秀吉の死後、調子に乗ってやりたい放題の家康に対し、豊臣家側のメンバーがブチ切れて戦いになったという流れかと思います。ただこの決戦、東軍の総大将が家康なのは納得できますが、西軍のリーダーが石田三成というのは申し訳ないのですが「あなた誰?」という印象です。そんな三成の置かれた立場を意識して読んでもらえると味わい深いかと思います。

 石田三成は秀吉に取り入ることで出世した武将で、そうした経緯から豊臣家体制を守ろうといういわば「アンチ家康」グループのまとめ役でした。しかし、家康ほどの求心力も財力もなく、本来リーダーになるべき西軍の総大将の毛利輝元はちゃっかり大坂城の留守番という安全な役割に収まってしまいました。その他の家臣たちもいつ家康側に寝返っても不思議ではない、結束の弱い軍団であったように思います。

 エンゲージメントゆるゆるの軍団のリーダーに、行き掛かり上なってしまった感がある三成。こんな状態で戦に突入することのリスクを想像できていたのなら、ステークホルダーにもそのリスクを知らせておく必要があります。「関ケ原の戦い」のプレスリリースでは、ステークホルダー対応としてこの戦がどのようなリスクをはらんでいるのかを末尾に入れました。

報道関係者各位

慶長5年(1600年)9月14日
豊臣家家臣
石田三成

明日開催の「関ケ原の戦い」について

 石田三成をリーダーとする「(仮称)西日本武将有志による徳川家康氏の言動を正す軍」(以下、西軍)は、明日より関ケ原方面を戦場とし、徳川家康氏率いる東日本の軍勢(以下東軍)との合戦を開催することを発表します。

 我らが主君である亡き豊臣秀吉公は、長かった戦乱をまとめ、ようやく天下統一の平和な世の中を実現されました。残念ながら早くに他界されたものの、その後の統治も豊臣家を中心に行うためのガイドライン「太閤様御置目」を残されています。

 豊臣家家臣らはこのガイドラインに沿って政治を運営していくべきですが、残念ながら早くも違反者が現れ、特に徳川家康氏は禁止されていた政略結婚を行うなど、その行動には多くのコンプライアンス違反が目につきます。

 また、家康氏は同じくコンプライアンス違反のあった上杉家を成敗するとして挙兵していますが、今回、豊臣家家臣有志による告発文「内府違いの条々」を見るや、その軍勢を西、すなわち大坂城に向けるという暴挙に出ています。

 このような経緯から、西日本に拠点を構える多くの武将から家康氏の行いを良くしたいとの声が上がり西軍を結成、石田三成を現場まとめ役として、明日より関ケ原方面にて徳川氏率いる軍勢と雌雄を決することと致しました。

 なお、豊臣家家臣の有力者である西軍総大将毛利輝元氏は、豊臣家拠点である大坂城守備を希望されたため、今回の戦いでは関ケ原には進軍いたしません。しかしながら当方軍勢には、小早川秀秋氏をはじめとする有力武将が控えるなど、必勝態勢で臨みます。

 徳川家康氏の言動を正し、今後も豊臣家を中心とした安定した社会の実現に努めてまいります。


【将来の予測について】

 本リリースに掲載している情報の一部には、現在入手可能な情報から得られた当家の計画・戦略、将来の見通し等があり、それらの内容は戦の情勢、有力武将の寝返り等、様々なリスクや不確定な要素により影響を受けることがあります。従って将来実際に公表される体制等は、これらの要因により見通し・予測と大きく異なる可能性があることにご留意ください。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
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