広報は会社の窓口。メディアからの質問には誠実な対応が求められます。広報担当者が嘘をついたり、ニュアンスの異なる表現や不確定事項を発信したりしてしまうと、後で辻つまが合わなくなり、広報自身の首を絞めることになりかねません。今回はメディアから答えづらい質問を受けた際の注意点を紹介します。

ここだけの話ですけどね――親しい記者が相手でも、言ってはいけない情報もあります ※写真はイメージ(写真提供:Reshetnikov_art/Shutterstock.com)
ここだけの話ですけどね――親しい記者が相手でも、言ってはいけない情報もあります ※写真はイメージ(写真提供:Reshetnikov_art/Shutterstock.com)

「イエス」と答えづらい質問に対する表現

 製品発表会や記者会見の質疑応答を想定し、Q&AのQを洗い出し、担当者にAを埋めてもらうことがあります。その際、広報がQ&Aづくりに慣れていないと、担当者から「ノーコメント」と書かれることがあります ▼関連記事:聞かれたくないことも掘り起こす メディア向けQ&Aのつくり方 。芸能関係の方などがプライベートな質問に関して「ノーコメント」と回答するのは「あり」だと思いますが、一般企業の発表で担当者や広報が事業に関する質問を受けて「ノーコメント」と答えるのは、極力「なし」にしたいものです。

 ある新聞の記事に、どこかの会社役員が「『ノーコメント』とコメントした」と書かれていました。「ノーコメント」をコメントとして扱われると、とても傲慢な印象を受けます。この場合、記者があえて書いたのだと思われますが、かなり感じの悪い対応だったことがうかがえます。「ノーコメント」は、話したくないことを無難にかわす際の“決まり文句”のように思えます。しかし、たとえ難しい質問であっても、何かしら回答する努力を見せたほうがよいでしょう。

 また、肯定も否定もしないのが「NCND(Neither confirm nor deny)」と呼ばれているものです。「NCND政策」というものがありますが、これは核兵器が存在するかしないかについて、「肯定も否定もしない」とする政策を意味します。「サバイバー:60日間の大統領」という韓国のドラマの中でも、NCNDについてこんなシーンがありました。

 報道官が会見でメディアからある人物の所在を質問されます。報道官はせき払いをした後、こう答えます。

 「国家安保のために言えません」

 これに対してメディアから「生きているのか」と集中攻撃を受けました。報道官は動揺しながら、「無分別な疑惑は国家安保の脅威になります。お答えできません」と述べて、演台から立ち去ります。

 シーンが変わり、その場面のビデオを見ながらある女性記者がこう問いかけます。

 「肯定も否定もしない。強く否定しないのは、肯定とみなしていいですね」

 私の経験を思い返しても、日本でもNCNDは「否定しない」という態度をあえて示しているとみなされ、「イエス」だと受け取られる可能性があると言えます。「ノーコメント」も同じような印象で、立場上「イエス」と言えないから答えないという選択をしていると映るでしょう。立場上答えづらい質問だとしても、否定したい場合にNCNDやノーコメントは不適切なこともあります。もちろん「否定しない」なら、NCNDを選択するのもあり得ます。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2022年12月19日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

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