記憶に新しいトンガ沖で発生した海底火山噴火。トンガの人々の安否を心配した方も多いでしょう。社会人ラグビーチーム「クリーンファイターズ山梨」にもトンガから来た選手がいます。そこで募金活動を行うことに。メディアの報道が共感呼び、多くの市民が協力してくれました。そこで見えてきたのは、広報活動の原点でした。

JR甲府駅前に立ち、募金への協力を呼びかける社会人ラグビーチーム「クリーンファイターズ山梨」の選手や関係者
JR甲府駅前に立ち、募金への協力を呼びかける社会人ラグビーチーム「クリーンファイターズ山梨」の選手や関係者

 日ごろ広報、マーケティングという仕事をしていますと、AI(人工知能)による分析ツールを眺めながらKPI(評価指標)だの可視化だのという理屈に追いかけ回され、ともすると本質的なことを忘れてしまいがちです。先日「そういえば広報ってこういうことだよね」という基本に改めて立ち返れる出来事がありましたので、今回はそのことについてお話しします。

 2022年1月15日、南太平洋トンガ沖で発生した海底火山噴火は、日本にまで津波が到達するなど、地球規模の自然災害となりました。連日日本への影響を伝える報道がなされていましたが、トンガの被災状況も気になって仕方がありませんでした。私が運営の手伝いをしている社会人ラグビーチーム「クリーンファイターズ山梨」にも、6人のトンガ人選手が所属していたからです。

 そして、以下にお話しするような経緯で、1月29日の募金活動へと発展していくことになります。

メディアからの取材依頼が反響

 「トンガ人選手を取材させてもらえないでしょうか」

 被災から数日たった1月18日ごろ、チームの拠点である山梨の地元メディアからこんな相談を受けました。「取材を受けてもいい」という選手がいたので、早速新聞やテレビの取材を受けてもらい、トンガの窮状を訴えるインタビューが報道されました。特に地元有力紙の「山梨日日新聞」が社会面で大きく取り上げてくれました。

 すると、チームのSNSのコメントや選手たちの勤務先などから、次々と「新聞を見ました。何か手助けをしたい」という反応が返ってきました。こうなると、もうチームだけの話ではなくなります。いわば我々がマスコミに対して発信したことが、社会からの反応となり、今度は我々が行動を促されたわけです。

 「鈴木さん、何かトンガのためになることをしたいです」――このトンガ選手の一言が決め手となり、チームで募金活動をすることに決めました。しかし、募金活動と簡単に言ってみたものの、いろいろ慎重に進めなければならないことがあります。例えばどの団体を通じて誰に対する募金をするのか、という透明性を確保していなければ、思わぬ炎上を引き起こしてしまいます。また、公道を使って行う活動なので、自治体や警察にしかるべき許可を取る必要もあります。後で取材を受けた際に、こうした基本情報の確認を求められる可能性がありますので、脇の甘いことをして台無しにするわけにはいきません。このような基本の「キ」を指さし確認することも広報の役目です。

 余談ですが、今回私の理解不足で収入印紙を貼らずに書類を郵送してしまいました。本来なら手続きを保留されてもおかしくありません。しかし県の担当職員の方が個人的に費用を立て替えてくださり、手続きを無事終えることができました。

 いろいろな方の善意にも支えられ、何とか準備も整ったので、募金実施直前の1月26日にプレスリリースを打ちました。またしても「山梨日日新聞」は大きく取り上げてくれましたが、果たしてどれほどの人が反応してくれるだろうか、収入印紙代で赤字になるんじゃないか、そもそも新型コロナウイルス感染症も再拡大している今、このような人を集める活動を行うべきなのだろうか……そんな不安もありました。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

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