取材が終わってから、掲載記事の原稿やゲラの確認を依頼されることが広報にはあります。主に事実関係のチェックですが、そこに広報とメディアとの間に“認識のズレ”があるようです。広報を校正代わりに使われても困りますが、多すぎる修正はメディア側にとっても不愉快。さて、互いの距離感はどうあるべきでしょうか。

メディア側が広報に事実確認を任せてしまうのは言語道断ですが、広報も赤の入れ過ぎにはご注意を ※写真はイメージ(写真提供:Lamai Prasitsuwan/Shutterstock.com)
メディア側が広報に事実確認をすべて任せてしまうのは言語道断ですが、広報も赤の入れ過ぎにはご注意を ※写真はイメージ(写真提供:Lamai Prasitsuwan/Shutterstock.com)

「修正して」に激怒した新人広報

 取材をお受けした後、メディア側から記事内容の確認のために校正原稿が送付されてくることがあります。記事原稿の確認に関しては、そもそもの目的や方法に対して、企業広報とメディア側の双方に“認識のずれ”があるように思います。

 新人広報のAさんは商品発表を行った後、多くのメディアから取材依頼を受け、それらを次々こなしていました。Aさんはある時、雑誌記事のファクトチェックをしていました。当時は、白黒の原稿がファクスで広報に送られてくるのが一般的でした。

 その雑誌の記事はきれいな写真がたくさんちりばめられており、それらの上に文字が乗っているレイアウトでした。誌面の美しさは実際の雑誌を見て初めて知ることになるのですが、手元にある校正原稿は、白地に黒い文字が並んで読める箇所はごく僅か。ほとんどが水墨画の上に文字が乗っているような状態で、文章を読むのがすごく難しいのです。次の段落はどこにあるのか……上下左右、目を凝らして探し出すのにイライラするAさんでした。

 なんとかスペック表にたどり着いたとき、驚きの事実に気がつきました。大きさや重さなどなど、恐らく20箇所近くあるスペックのデータが、どれも間違っていたのです。

 「マジか……これはひどい」

 目の前が真っ白。Aさんは過去、プレスリリースのスペックを書き間違えて、発表会の会場で訂正をするという失態をしでかしていました。それ以降、Aさんはスペックの数字は決して“触らない”と決めていたのです。完全文系のAさんは、Ω(オーム)やdB(デシベル)といった単位は何度説明を受けても聞いたときだけ分かった気になるだけで、たとえ桁数が違っていても気づける自信もありません。

 原稿チェックの際、プレスリリースを見直して、一つひとつ確認していけばいいのでしょうが、修正を水墨画の余白に書いたところで、先方が読み間違えたら一巻の終わり。結局、間違ったスペックが世の中に出てしまうことになります。

 修正を反映したこの難解な原稿を、もう一度確認させられるのはゴメンだし……。そう考えたAさんは、意を決して電話の受話器に手をかけました。

A:「○○のAです。送っていただいた原稿なんですが、スペックが全部間違っているみたいなのですが、何をご覧になって記載されたんでしょうか」

相手:「ああ、それ書き忘れたんですけれど、以前他の原稿で作った他の商品のスペックを流用しただけなので、そちらで修正していただけますか」

A:「えっ? 原稿を書く前に、プレスリリースを送付してご確認いただいたかと思うのですが、そちらで修正していただけませんでしょうか」

相手:「他の広報の方は直してくださいますよ」

A:「(なぬぅ~。この後に及んで、他の広報と比較してくるのかっ)。他の広報の方がなさることは存じ上げませんが、プレスリリースを送れと言ってお送りして、それを基に書いていただいたのに、記事中のファクトが間違っているうえに、スペックまでこちらで修正しろとおっしゃるんですか。それだとこちらで記事を書いているようなものなんですけれど、あなたの仕事は何なんですか。原稿料、私がいただいたほうがいいように思いますけれど!!!!」

 Aさんは、息継ぎせずに相手を攻め立てました。

相手:「(焦った様子で)すみません……。プレスリリースを確認して書き写したら、再度ファクスを送りますのでご確認をお願いいたします」

A:「とりあえず、スペック以外の箇所は戻しておきます」

 このレベルのやり取りは、後にも先にもこれ一度きりだったそうです。この出来事は、同じフロアにいた広報の同僚しか知らないとのこと……。

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