2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」。今や企業はこれを無視するわけにはいきません。「わが社のSDGsへの取り組み」をアピールする動きも活発化しています。しかし、その扱いについては注意が必要です。

今や「SDGs(持続可能な開発目標)」の言葉を目にしない日はほとんどありません(イラスト:T-K-M/Shutterstock.com)
今や「SDGs(持続可能な開発目標)」の言葉を目にしない日はほとんどありません(イラスト:T-K-M/Shutterstock.com)

 2~3年前から「SDGs」という言葉を徐々に聞くようになり、最近では耳にしない日はないといってよいでしょう。マスコミでも、例えば日経産業新聞に「SDGs」というコーナーがあるように、大きくハイライトされる分野となっています。新聞だけでなくテレビやラジオ、ネットニュースまで、こぞってSDGsの話題を取り上げています。

 広報担当としては、情報の出先となる記事の数が多ければ、それだけ自社が取り上げられるのではないかと期待が膨らみます。何しろSDGs文脈で露出するというのは、企業イメージとしてもこの上なく良い印象なので、ここはぜひ狙っていきたいところです。

 ところが、私の周囲の企業広報や広報代理店の方からは、思ったよりもこれは難しいという声が聞こえてきます。いいことずくめに思えるSDGs広報で、今何が起こっているのでしょうか。

かつてないレッドオーシャン状態のSDGs広報

 賢明なる日経クロストレンドの読者の方ならもう察しがついているかと思いますが、「需要と供給」というものが広報の世界にも存在します。SDGsについては、需要(マスコミの記事数)も増えていますが、広報活動の件数もそれ以上に爆発的に増えているようなのです。

 あっという間にレッドオーシャン化してしまった感のあるSDGs。中にはブームにあやかって何をやっているのか中身が伝わらない、ふわっとした「わが社もSDGsに取り組んでいます」といった程度の発表も含まれているのではないかと思います。これはちょっと心配ですね。

 私の働いているIT業界では、昔から新しいテクノロジートレンドを表す流行語が誕生しては消えていきます。古くは「eビジネス」「Web2.0」「○aaS」というようなものですね。ちょっと注目を集めると、その流行語にあやかろうと寄ってたかって「これもWeb2.0である」「わが社もそろそろeビジネスを」という具合にいろいろなものをこじつけて、最終的にはその言葉自体が意味を持たなくなって消滅する、という歴史を繰り返してきました。最近では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が、ほぼその道を歩き始めている気がしていて心配でなりません。

 そんな“流行語潰し”が常態化しているIT業界の視点で見ると、今日のSDGsブームにも似た危うさを感じてしまいます。

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