2021年は「20代後半から30代くらいで、広報としてある程度仕上がっている人を紹介してほしい」といった話をいただくことが何度もありました。しかし、広報の仕事をやってきた人とそうでない人とでは、広報として「仕上がっている」かどうかを判断する基準が異なります。そこで今回は「広報の資質」について考えてみたいと思います。
紹介された企業から質問されたこと
2013年にフリーランスになってから、人材派遣会社や知り合いを通じて広報の仕事をたくさん紹介していただきました。その際、相手企業との面談(契約に至らなかったケースがほとんど)では、広報スキルやメディアとのパイプなどについてよく質問されました。端的に言えば、「あなたは広報のノウハウ本に書いてあるような基本ができていますか」ということです。
以前も書いたことがありますが、仕事の質を考慮しなければ、広報の基本的な業務自体は何冊か本を読んで勉強し、ある程度のビジネススキルを身に付けていればこなせることもたくさんあります。ですから「○○ができますか」と質問された場合、少しばかり広報経験があれば、ほとんどの仕事については「できる」と答えられます。しかし、心の中でいつも「それでいいのかなあ……」という疑問は拭えませんでした。
何かしらの国家資格を持っている、簿記1級を持っている、エクセルの関数が使いこなせる、TOEICのスコアが800点以上、といった分かりやすい基準は広報の仕事にはないので、面談を受けているこちらとしては、主観的な判断で「できる」と答えられますし、それは嘘ではありません。ある面談で得意なことを3つ挙げてくださいと聞かれたことがありますが、これも主観で答えられる質問です。このときは質問の意図が読み取れず、逆質問をしたところみるみる相手の顔色が変わり、機嫌を損ねてしまいました。
昨年(21年)、ライターとして何年も経験のある人が「文章を書くのが得意です」と自己申告してきたので、広報として採用したところプレスリリースをまともに書けなくて困った、といった話を聞きました。広報人材を獲得する上で、得意不得意やできるできないの自己申告については、決定的な判断材料にはならない可能性があります。
企業が即戦力として広報を採用したい場合、広報の「基本のキ」ができるかどうかを確認することは大変重要です。自社が広報に求めるものを面接相手に対してはっきり提示し、仕事をすることになった場合、「あなたが不得意と感じる点があるとしたら何ですか」と聞いてあげると相手も答えやすいでしょう。企業側のニーズが分かれば、面接を受ける側も具体的な実績や成果物について提示できます。そうすれば、互いにミスマッチが生じるような事態はかなり避けられると思います。
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