この連載の筆者である鈴木正義氏が本を出版しました。きっかけは大好評だった「大政奉還」のプレスリリースです。書籍では鈴木氏が熟練の広報テクニックを武器に、プレスリリースという手法を駆使して日本史の大事件を鋭く斬りまくります。今回はその中から「遣唐使募集」のエピソードを紹介します。
<前回(第117回 広報の手にかかれば、松尾芭蕉だって旅行系の人気ユーチューバー)はこちら>
「船酔いしない」は応募条件から外せない
前回に引き続き『もし幕末に広報がいたら 「大政奉還」のプレスリリース書いてみた』の中から、今回は遣唐使についてのエピソードをご紹介します。
ここでの広報ポイントは、約1300年前にさかのぼって、その当時における「最近の若者」へ向けた訴えかけであるという点。飛鳥時代のおじさんたちとはちょっと価値観の異なる、今でいう「Z世代」にどうアプローチすればよいのでしょうか。遠い昔の時代とはいえ、世代間の格差や認識の違いみたいなものは当時もあったでしょう。そこをうまく考慮しなければ、彼らの心にメッセージは響きませんよね。
私は仕事の関係で英語を必要とする機会がたびたびあります。しかし、帰国子女でもなく留学経験もありません。むしろ学生時代は英語が大の苦手だった私にとって、英語のコミュニケーションは今でも苦痛以外の何ものでもありません。その一方で、英語を勉強する気もないくせに若い頃アメリカ文化に憧れていたのも事実です。いかにも燃費の悪そうな派手なオープンカー、幹線道路沿いのダイナーで食べるハンバーガー、ポップコーンを片手に観戦するメジャーリーグ。私の世代であればこうしたアメリカの風景に憧れを抱いた人は少なくないでしょう。
いつの時代でも海外の文化に憧れを抱く若者はいたでしょう。飛鳥時代、若者たちの憧れは唐の国だったのではないかと思います。日本の歴史の中でほとんどの時代、中国は世界の超大国という位置づけでした。時に日本の脅威となることもありましたが、常に最先端の科学、文化、政治システムなどのお手本となる国で、日本の歴史に与えた影響は計り知れません。
その進んだ文化を吸収しようと送り込まれていたのが「遣唐使」です。実際には遣唐使はエリート中のエリートだったと思われますが、もし遣唐使を公募するようなことがあれば、唐の文化に憧れた優秀でモチベーションの高い若者が、たくさん応募してきたのではないでしょうか。ちょっと募集をしてみましょう。
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