前回(第112回)に引き続き、メディア関係者に対して実施した「広報やPR担当者の『無しだなぁ』と感じた行動」というアンケートを基に、広報の仕事について考えます。今回は発表会や説明会などでの広報の振る舞いについてです。回答の中から、特に良くないと思われるものを3つ紹介します。

別に親しげなのが悪いとは言いませんが…… ※画像はイメージ(写真提供:NDAB Creativity/Shutterstock.com)
別に親しげなのが悪いとは言いませんが… ※画像はイメージ(写真提供:NDAB Creativity/Shutterstock.com)

 私は以前ソニーにいましたから、比較的多くの広報発表会を経験したほうですが、それでも出席数は3ケタに届きません。対してメディアの皆さんの中には、軽く4ケタに達する方がたくさんいらっしゃるでしょう。発表会の主催側、出席側と立場は違いますが、メディアの方々は広報の数十倍、数百倍もの経験値があると考えたほうがいいでしょう。そうなると、当然企業ごとに対応の差が見えてくるに違いありません。

 知り合いのメディア関係者に対して行った、広報・PR担当者に対してどのように考えているのかというアンケートで、今回紹介するコメントをいただいた3人の方も、相当な場数を踏んでいらっしゃいます。企業側としてはその声を真摯に受け止め、広報活動の参考にしていただきたいと思います。

出席者に対しては分け隔てなく接する

 最初はこちらのコメントから。

 「発表会に行った際、どこからかキャ~!という黄色い声が。何かと思ったら、有力メディアの編集者が会場に到着して、広報担当者が満面の笑顔で歓待しているところでした。実力のある媒体なので優遇されるのは仕方ないと思いますが、あからさまにキャ~!は夜のお店かい……とげんなりした覚えがあります(^^;;;」

 これを読んで、私自身も受付でオーバー過ぎるリアクションをした経験があるので反省しました。もちろん「キャ~!」はやり過ぎですが、久しぶりにお会いした方なら、その気持ちをお伝えしたほうがいいでしょう。極端に無味乾燥なあいさつで済ませる必要はありません。ここでの注意点は、相手によって対応の落差が大きかったことでしょう。同じ取材目的で発表会に参加しているわけですから、接し方にあからさまな違いがあれば、メディアの方々に不快な思いをさせてしまう恐れがあります。

 発表会での広報は、ホストとしての立ち居振る舞いを意識しなくてはなりません。招待しているメディアをゲストとして捉え、分け隔てなく対応する意識です。考えにくいですが、出席者全員に「キャ~!」と対応していれば「この会社はそういう広報スタイルなのだな」として受け止められたと思います。スタイルは十人十色ですから。

 また、発表会場で広報担当者が1人の記者と話し込み過ぎるのもよくありません。広報は一人ひとりと深く話すのではなく、ゲスト全員に目を配りながら、接し方に偏りがないかどうかを確認して回りましょう。話が長引きそうな場合は、商品担当者の所にお連れするのも手です。広報は長居し過ぎず、ゲスト全員のケアにいそしみたいものです。

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