外国人相手の取材には通訳がつきものです。インタビューする記者の意図を正確に読み取り、相手に伝えるのはなかなか大変です。また逆もしかりでしょう。通訳のスキルが問われるのは言うまでもありませんが、アグレッシブ過ぎる通訳だと面倒なことになりかねません。

あのジャーナリストは、本当にそんなことを言っているのですか? ※画像はイメージ(写真:Potstock/Shutterstock.com)
あのジャーナリストは、本当にそんなことを言っているのですか? ※画像はイメージ(写真:Potstock/Shutterstock.com)

気を利かせたつもりが命取りに

 「ヘイ! 鈴木さん」

 私の会社の社長は、私に話しかけるとき、ほぼ100%こう呼びかけてきます。なぜなら社長はカナダ人だからです。幸いにして現在の社⻑であるデビット・ベネットはかなり流ちょうな日本語を操るので、私ごときの英語力でも何とか社長取材などの対応もこなせています。

 それでも時々つたない英語力をアピールしてやろうと取材前の資料を英語で用意すると、「これ、日本語のメモをつけてくれないかな? このままだと僕翻訳してしゃべっちゃうよ」と言われます。

 これの何が問題かといいますと、まず私の頭の中に回答すべき日本語があります。これが日→英に翻訳されます。その英語を読んだデビットの頭の中で今度は英→日の翻訳が行われます。一旦英語に変換されることで、元の私の頭の中にあった日本語とは微妙に違う日本語でデビットが取材に対応することになるわけです。実はこの微妙に違う日本語というのが、取材においては命取りになることがあるのです。

 幸い取材は私の目の前で日本語によって行われているので、「あ、社長そこ違います」みたいな突っ込みをインタビュー中に入れることでトラブルは回避できます(社長に対して少し失礼な感じになっていますが)。問題は英語しかできない海外のエグゼクティブが来日した際の取材対応です。当然プロの通訳に入っていただいて進めるのですが、この通訳に“クセ”があったりすると時としてトラブルに発展することがあります。

 以前、新製品に関するオンラインインタビューがあり、日本のジャーナリストが新製品についてこう切り出しました。

 「この新製品、特に革新的な技術を使っているとは思わないのですが……実に素晴らしい使い心地ですね」

 まあ、少々ひねっていますが褒めてくれているわけです。ところがこれを通訳者が「I don't think this product is innovative! ……」と割と語尾強めに言って、そこでなぜか一拍間が空きました。すると、みるみる画面の向こうの製品担当役員の顔色が青ざめていくのが分かります。しかし、こちらでは通訳が翻訳し終わるまでジャーナリストはニコニコしています。

 外国人幹部からすると、人様の会社の新製品をけなしておきながらニコニコしているこのジャーナリストの狙いは何なんだ。そんな謎なジャーナリストの取材をわざわざ組んでくる日本の広報はいかれているのか……? などなど、いろいろなことが頭の中を駆け巡ったのではないかと思います。しかし数秒後、「However,……」と続き、硬直して粘土のような色になっていた幹部の顔にも、徐々に生気が戻ってきました。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
26
この記事をいいね!する

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

第1章 広報しか知らないマスコミの素顔
第2章 取材対応こそ危機管理の要
第3章 経営者が知っておくべきマスコミ対応の落とし穴
第4章 掲載を勝ち取るマスコミへのアプローチ
第5章 天国と地獄が交錯するプレス発表会
第6章 今だから言える企業広報の裏話
全83エピソード(350ページ)
Amazonで購入する