2021年もそろそろ終わりです。そこでこの1年を振り返り、「すべってしまった(うまくいかなかった)」プレスリリースについて、反省を込めてその原因を考えました。実は、それはつい最近出したリリースでした。

広報発表ではなるべくすべりたくないものですが…… ※写真はイメージ(写真:Gino Santa Maria/Shutterstock.com)
広報発表ではなるべくすべりたくないものですが…… ※写真はイメージ(写真:Gino Santa Maria/Shutterstock.com)

「Kind City構想」で大すべり

 先日、2回目の新型コロナウイルスワクチン接種も終わったので、久しぶりにアウトレットモールに出かけました。11月に入ったばかりだというのに、もうクリスマスの飾りつけになっていて少々驚きました。それを見て、今年も終わりだな……という気分になったので、今回は2021年の広報活動を振り返ってみることにしましょう。広報としてうまくできたと思う案件や、残念ながらあまり世間の関心を集められなかった案件など様々なことが頭に浮かびました。

 このような連載をやっていると、あたかも私が広報の達人であるかのような誤解をしている方もいるかもしれませんが、正直いまだに失敗や後悔ばかりです。このコラムではその失敗例を赤裸々に語ることが自分の役割だと、最近では思うようになっています。そこでここでは広報として「今年一番すべった発表」を題材に、何がいけなかったのかを反省してみたいと思います。

 2021年最大の「すべり」は、実を言いますとまだ記憶も鮮明な10月27日、レノボ・ジャパンとして発表した「Kind City構想」というプレスリリースです。これが何かということはプレスリリースを読んでいただきたいのですが、現在のところこの発表はネットニュース1本の露出しか獲得できていません。ただしそうなるのではないかと思っていた面もあるので、PR TIMESによる情報配信とその転載、さらにペイドパブ記事の保険もかけていましたから、検索結果ではそれなりに記事が出ているように見えています。

いけなかったことその1:思いが強すぎて唐突だった

 レノボという会社については、キーボードの真ん中に赤いトラックポイントの付いている「ThinkPad」というパソコンのメーカーとしてご存じなのではないかと思います。また日本ではNECとの合弁会社(それがNECパーソナルコンピュータです)、富士通との合弁会社も持ち、手前味噌ですがなかなか経営的にもエッジの利いた活動をしています。

 しかし一方でブランドへの消費者の理解という点では他のグローバルIT企業に比べると、まだ改善の余地があります。そこで、自社の強みであるテクノロジーを使って何か意義のある社会実験なり社会貢献なりをやってブランド理解を高めようじゃないか、ということになりました。こうして始まったのがこのKind Cityプロジェクトです。

 Z世代などの若い方はSDGs(持続可能な開発目標)やダイバーシティー(多様性)などへの課題意識が高く、声を上げたいけれどもどこへ持っていっていいか分からない、という人も多いと思います。そうした方たちにその声をぶつける先を用意し、その集計結果を見て、レノボは社会貢献の行動を起こします、というのがKind Cityプロジェクトの主な内容です。会社としては非常に重要な取り組みなので、プレスリリースにもその辺りの意義が熱く語られています。

 しかし、受け手であるプレスの方何人かと会話したところ、「ちょっと唐突な感じがして」「何がやりたいのかいまひとつ分からなかった」という声が返ってきました。煮えたぎったマグマのように社内で盛り上がった思いが一気に噴出したものの、レノボがどういう課題意識を持っていて、だからこんな行動を起こしたのだという背景説明を全くしなかったので、リリースを受け取った側も唐突な感じがしたのだと思います。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
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