今回は筆者の遠藤眞代さんが広報を担当した米国発のスマホアプリ「Miles(マイルズ)」について。発表会から1週間あまりでダウンロード数は30万以上、2021年11月4日には50万を突破しました。注目のサービスだったので当然の結果、そんな見方もあるでしょう。しかし広報活動がなければメディアでの露出はゼロ。工夫したポイントなどを紹介します。
信頼度ゼロのスタートアップ、どうメディアに迫る?
Milesの発表会は、2021年10月20日にリアルとオンラインのハイブリッド形式で行いました。例年10月は年末に向けて発表の多い時期ということもあり、他の大きな発表と重なるのではとヒヤヒヤでした。発表会の日時がかぶってしまうと、当然ですがニュースバリューの高い大企業に記者は流れます。今回のようなスタートアップの発表の場合、大企業の発表会とバッティングすることも想定して準備をしておく必要があります。
なぜか嫌な予感というのは的中するものです。前日の10月19日は衆議院選挙の公示、同日の午前2時にはアップルが新しいプロセッサーを搭載した新型「MacBook Pro」の発表会が開催されました。さらに当日の20日には、午前2時からGoogleの最新スマホ「Pixel 6」シリーズの発表会が行われました。これらの日程が判明したのは、Milesの発表会を案内したほんの数日後でした。
Milesを運営する米コネクトIQラボは、米国で「シリーズA」の資金調達が終了したばかりで、日本では無名のスタートアップ。日本市場への導入のために立ち上げられたMiles Japan(東京・渋谷)は今年設立したばかりで、繁忙期のメディアの皆さんに発表会に出席してもらうのは、決して楽なことではありませんでした。
「似たようなアプリ、他にもありますよね」
「面白そうですけれど、ちょっとウチでは紹介しづらいかな」
「検討しますね」
こういった返答がくることは容易に想像できました。
メディアへの声がけは、自分自身を含めてそこの記者と面識のある人であればいいと思っていました。しかし今回は一歩踏み込み、社長を含め手分けをして、そのメディアと関係が深く、より信頼度の高いと思われる人が中心となって行いました。たとえ私に面識があったとしても、しゃしゃり出るべきではない所はグッとこらえました。ある程度知名度のある企業なら「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」ものですが、今回のケースでは逆効果に思えたからです。
スタートアップの場合、企業自体の信頼度は低いというか“ゼロ”です。出席するかどうかの判断は、声がけする人の言葉を信頼できるかどうかが大きく影響します。ただこの方法だと、「○○さんから声をかけられた発表会イマイチだったよ」なんてことになったら、声がけした人の信頼まで損なってしまいます。そうならないように、入念な準備が不可欠です。
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