わけあって「クリーンファイターズ山梨」という社会人ラグビーチームの広報をやることになった鈴木正義氏。しかし、そのチームはこれまで本格的な広報活動をしてきていません。まさに一からの出発ですが、やってみるとそこは広報にとって参考事例があふれる“宝の山”でした。

「クリーンファイターズ山梨」の試合風景。ボールを抱えているのは元日本代表のナタニエラ・オト選手(写真/髙野宏治)
「クリーンファイターズ山梨」の試合風景。ボールを抱えているのは元日本代表のナタニエラ・オト選手(写真/髙野宏治)

 突然ですが、フルーツの秋です。フルーツと言えば山梨。実は私はここのところ週末になると山梨に通っています。と言ってもぶどう狩りではなく、山梨にある社会人ラグビーチーム「クリーンファイターズ山梨」の運営を少しお手伝いしているのです(長いので以下「CF山梨」とします)。

 社会人ラグビーと言えば、日本代表選手が多数在籍する「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE(ジャパンラグビー リーグワン)」(2020年まで「トップリーグ」と呼ばれていたリーグが再編)を思い浮かべると思いますが、このチームはその1つ下の「トップイーストリーグ」というカテゴリーで活動しています。1つ下と言ってもこのリーグは東京ガス、ヤクルト、セコム、横河電機など、誰もが知る大企業が母体の本格的な実業団チームで構成されています。

 一方のCF山梨は特に母体となる企業を持たず、山梨という地域で働いているラガーマンが、仕事終わりに練習場へ集まって活動しています。要するに「あまり恵まれているとは言えない環境で頑張っているチームなのだな」と想像いただければ大体その通りです(こう書くとサポートしていただいている企業や関係者に申し訳ないのですが、まずはそう思ってください)。

 ここで私はチーム広報を担当しています。とにかくスタッフの人数も足りない運営体制なので、これまでチームとしては本格的な広報活動を行ってきませんでした。しかし「チームの強化にはまず広報」というアドバイザーの一言で、たまたま知り合いで広報経験のある私に声をかけていただきました。いわば「初めての広報」状態からのスタートです。

スタートアップ広報のヒントがあふれている

 プロチームでもないCF山梨がどうして広報を、と思われるかもしれません。実は地域密着型のアマチームであるからこそ、広報が大切なのです。むろんマスコミに紹介してもらって選手のモチベーションアップを図る狙いもありますが、資金調達という目的も意識しての広報活動です。チームとしてさらに強くなるには、世知辛いようですがやはり強化費がある程度必要なのです。

 ホームグラウンドもなく(県営グラウンドを借りて試合をしています)、有料観客試合もないため、チームの実入りはスポンサー収入に頼っています。スポンサー企業からするとチームは広告媒体なわけですから、チームの露出が増えれば広告媒体としての価値も上がるわけです。その他ファンクラブのような運営もできますし、グッズ販売、さらにクラウドファンディングといった展開も見えてきます。

 ここまで長年チームを支えてくれたスポンサー企業に恩返しをする意味でも、広報は期待されているのです。チームとしてコンプライアンスを順守しないと、簡単にチームの存亡の危機に陥ってしまいますから、チームの危機管理も広報の大切な役目です。

 一方、広報が自分でやらなければいけないことも多岐にわたります。プレスリリースはもちろん、試合の写真撮影、ホームページの更新、YouTube用の動画編集まで、おかげで週末も退屈しないのと、いろいろなスキルが身についてきました。低予算の中で工夫をしながらチームの知名度を上げ、投資家をみつける、ステークホルダーの輪を広げる、リスク管理をする。そう、まるっきりスタートアップ企業と同じことをしているのです。

 と、理屈では分かったものの、普段の企業広報と違い、どこから手をつけてよいものやらさっぱり見当がつきません。まずは同じような地域のスポーツチームのやり方を勉強しました。調べて分かったのですが、サッカーや野球、バスケットボール、バレーボール……現在、日本中に驚くべき数の社会人スポーツチームがあるのです。その多くがCF山梨と同じように地域チームです。こうしたチームがそれぞれ広報活動をしていることを考えると、地域スポーツチームの広報というのは、スタートアップにとって参考事例の宝庫ではないかと思います。

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