同じ言葉でも漢字やカタカナ、英語の略語などによって印象が変わってきます。広報とサービス担当といった職種の違いによって、同一の言葉の受け取り方が微妙に異なるケースもあります。言葉の意味や解釈には広がりがあります。思い込みで判断するのは危険。広報なら特に気をつけたい部分です。

母と娘の「BTS推し」が気づかせてくれた言葉の大切さ ※画像はイメージ(写真:Kathy Hutchins/Shutterstock.com)
母と娘の「BTS推し」が気づかせてくれた言葉の大切さ ※画像はイメージ(写真:Kathy Hutchins/Shutterstock.com)

 「ママ、BTSの新曲、YouTubeの再生数が“バグってる”よ!」――。朝のあいさつを早々に済ませ、テレビに映したYouTubeで「推し(自分が特に応援している芸能人など)」の情報をチェックするのが我が家の日課です。しかし、今朝は「バグってる」という娘の言葉に、母は一瞬意味が分からず慌ててしまいました。

 テレビに近寄って再生回数をチェックしたところ、数千万回も再生されていました。数は多いのですが、大好きなBTSならあり得ます。この数字は「バグ」なのでしょうか?

 「ね、バグってるでしょ。すごいよね」とはしゃぐ娘。

 そこで母は「ああ、それは“バズってる”の間違いだ」と気づく。「バズ」は英語の「buzz」で、噂になるとか話題になるという意味です。元の意味を知らずに何となく「バズる」と使っている方も少なからずいるのではないでしょうか。ちなみに「バグ」の元は英語の「bug」で、パソコンやゲームがプログラムの不具合などで動かなくなった際に使いますよね。

 「いや、バグってないよ。ネットで検索してもバグってるって記事も載っていないから、大丈夫みたい。もしかして“バズってる”と言い間違いしていない? 意味が全然違うよ」と母。

 すると娘は「こないだ私の好きなYouTuberが、たくさん再生されたときに“バグってる”って言ってたから間違いないよ」と。かたくなに信じているようなので、母は返す言葉がなく、この場はいったん引き下がることにしました。

 この話は、似たような言葉の意味を誤って理解していたため起きた出来事で、日常生活の「あるある」でしょう。それは広報の仕事でもあり得ることで、同じ言葉でさえ立場によって意味合いが異なる場合があります。

「リリース」の認識違いで焦る広報

 ある広報担当者と新サービスの担当者との間で、以前このような会話のやり取りがありました。

広報担当者:「では、〇月〇日にリリースということでいいでしょうか?」

サービス担当者:「はい、そうです。〇月〇日にリリース予定です。広報の準備をよろしくお願い致します」

広報担当者:「承知しました。では、リリースに必要な情報を送っていただけますか。すぐ準備を始めたいので」

サービス担当者:「了解です。リリースの詳細情報をお送りします」

 ここまでの流れはスムーズで、違和感もありませんよね。しかしこの後、広報担当者はサービス担当者からあることを言われて、はっとするのです。

サービス担当者:「で、発表は『〇〇(サービス名)』をリリースした後がいいですかね、それとも前日、あるは当日がいいでしょうか?」

広報担当者:「え、ちょっと待ってください。私が思っていた『リリース』と違うみたいですが……。『リリース』ってどういう意味合いで使っていらっしゃいますか?」

 確認すると、広報担当者が考えている「リリース」とは、通常「プレスリリース」を指します。つまり報道向けの発表文です。ところが、このサービス担当者が使っていた「リリース」が意味していたのは、スマートフォンアプリの「配信開始」のこと。この新サービスが世の中に送り出されるタイミングを指していました。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2021年12月28日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

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