新製品や新サービスの発表に追われる広報ですが、時として「枯れた技術」を使った製品の売り込みが降りかかってくることも。今さら……と馬鹿にしてはいけません。これがホームランになることもあります。そこには欠点がそぎ落とされ、長年培われた技術者の英知が詰まっています。枯れた技術が貴重な記録を“救う”ことだってあるのです。

最近、カセットテープに復活の兆しが見られるようです ※画像はイメージ(イラスト:Boodah Colours/Shutterstock.com)
最近、カセットテープに復活の兆しが見られるようです ※画像はイメージ(イラスト:Boodah Colours/Shutterstock.com)

 年末に2度目の車検を迎えることから、新車への買い替えを促す電話が自動車販売会社から入りました。今の車に不満がなく買い替える気はなかったのですが、下取り価格の査定をしてくれて新車も見せたいということだったので、遊びに行きました。営業の方といろいろ話すうちに、広報という職業柄、自分が「新しいトレンド」と「枯れた技術」の魅力を、常にてんびんにかけていることに気づきました。そこで今回は、私が「枯れた技術」を大好きになった経験を書いてみようと思います。

「手回し充電ラジオ」の快挙

 2006年の初夏、ソニーの広報だった私は9月1日の防災の日に向け、新型「手回し充電ラジオ」の発表準備にいそしんでいました。現在はコロナ禍による「在宅勤務のお供」ということもあってラジオが人気だそうですが、06年のラジオ市場は下降気味と言われていました。幼い頃から「オールナイトニッポン」にどっぷり漬かっていた私でも、右肩下がりの商品をメディアに売り込んでほしいと言われ、さすがに最初は一瞬腰が引けました。

 ラジオのような枯れた技術の商品は、事業部サイドとしても記事化に対する期待が比較的低いものです。しかし逆に記事が出ようものなら、ものすごく事業部に感謝されます。ということもあり、広報的には都合が良さそうなので引き受けることに。

 当時のソニーは、1年間にものすごい数の新商品を発売しており、すべての商品をメディアに発表できるわけではありませんでした。特にオーディオは商品数が多く、発表するかどうかの最終判断は広報に委ねられている部分もありました。繁忙期には毎週2件の発表を抱えることもありましたが、それでも対応しきれず、私の知らない商品もあったほどです。

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『もし幕末に広報がいたら 「大政奉還」のプレスリリース書いてみた』

『もし幕末に広報がいたら 「大政奉還」のプレスリリース書いてみた』
2021年12月20日発行
連載「風雲! 広報の日常と非日常」でおなじみの現役広報パーソン・鈴木正義氏による初の著書。「プレスリリース」を武器に誰もが知る日本の歴史的大事件を報道発表するとこうなった! 情報を適切に発信・拡散する広報テクニックが楽しく学べるのはもちろん、日本史の新しい側面にも光を当てた抱腹絶倒の42エピソード。監修者には歴史コメンテーターで東進ハイスクールのカリスマ日本史講師として知られる金谷俊一郎氏を迎え、単なるフィクションに終わらせない歴史本としても説得力のある内容で構成しました。
あの時代にこんなスゴ腕の広報がいたら、きっと日本の歴史は変わっていたに違いない……。
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