プレスリリースをはじめ広報が作成する文書は、会社の公式見解として社外に発信されます。自分が書いた文章、選んだ言葉がそのまま記事になることも珍しくありません。メディアの記者だけでなく、広報も常に「言葉の重み」と隣り合わせで仕事をしているのです。

広報も言葉の持つ力を意識しなくてはなりません ※画像はイメージ(写真:Rocksweeper/Shutterstock.com)
広報も言葉の持つ力を意識しなくてはなりません ※画像はイメージ(写真:Rocksweeper/Shutterstock.com)

 広報に関して相談を受けた際、必ずお薦めしているのが共同通信社の『記者ハンドブック 新聞用字用語集』です。まさに私がマスコミ対応のため、広報になって最初に読んだ本です。初版は1956年(東京タワーが完成する2年前)で、約65年間も店頭に並んでいる隠れたベストセラー。現在は第13版を手に入れられます。

 本を開くとすぐさま「新聞記事の大原則」や「記事の書き方」という項目が目に飛び込んできて、報道の現場で仕事をする人に向けられているのが分かります。記者が記事を書くためのプレスリリースや資料を作る広報として、用字用語の基本を学ぶのに最適な1冊です。そこで今回は、企業が公式の立場で情報発信をする場合、広報として最低限気をつけておきたい点について触れてみたいと思います。

転載されてしまうことも多いから責任重大

 プレスリリースを書くに当たって、先輩から「広報が書くプレスリリースをそのまま記事にしても問題ないように書くこと」と言われたことがあります。「そのまま載るわけないでしょう……」と半信半疑でいたのですが、発表翌日、ある業界紙にプレスリリースの一部がほぼそのまま転載されていました。もちろん記事として成り立つよう主語や語尾が変えられていましたが、その時、言葉の重みや広報の責任の大きさに震えたのを鮮明に覚えています。

 あれから20年近くたちましたが、今はどうでしょうか。最近はプレスリリースの配信サービスを使うと、企業のプレスリリースがあたかも媒体が書いた記事であるかのように配信登録先へ流れていきます。昔とは露出の形は若干変わりましたが、言葉の重みに対する基本的な考え方は同じだと思います。

 以下は、私の失敗談や先輩に教わってきたこと、記者ハンドブックに書かれていることを交えながら、気をつけていただきたいポイントを紹介します。

 まずは同音異義語のトラップです。お恥ずかしい話ですが、プレスリリースを書き始めたころ、「ついきゅう」と「とくちょう」の同音異義語トラップにはまったことがあります。要は間違えた漢字を使ってしまい、何度も赤を入れられたということです。

 「本商品は、使いやすさを“ついきゅう”しました」
 「この商品の最大の“とくちょう”は、世界最軽量ボディーです」

 こんなふうに、いずれもプレスリリースではよく使う言葉です。この場合、どの「ついきゅう」を使うのが正しいでしょうか?

 (1)【追及】
 (2)【追求】
 (3)【追究】
 (4)【追窮】
 (5)【追給】

 迷うとしたら(1)~(3)ですよね。私がいつも書いてしまっていたのは(1)。でも正解は、(2)の「追い求める」です。「使いやすさを“追い求め”ました」となります。もし(1)にしてしまうと、追い詰めてしまうことになり、意味が違ってきます。

 完全に言い訳になりますが、当時パソコンの日本語入力ソフトには、学習変換という機能がありませんでした。ですから、次の時に「ついきゅう」と打つと、またまた最初の候補として【追及】が出てきてしまう。そこで気づかず、また間違えるということの繰り返し……。

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『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』

『マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝』
2022年12月19日発行
 連載「風雲! 広報の日常と非日常」が本になりました。これまで3年半以上に及ぶ、約150本のコラムの中から、「マスコミ対策」に焦点を絞って再編集。企業や個人までも手軽に情報発信できるSNSがもてはやされる今日ですが、“バズった”記事の出どころをたどると、マスコミの記事や番組であることが少なくありません。だからこそ、企業は「情報の源流」でもあるメディアへの対策を十分に練り、正しい情報を伝え、記事や番組として発信してもらう重要性がこれまで以上に高まっていると言えます。本書は連載でおなじみの現役広報パーソンである二人の著者(鈴木正義氏、遠藤眞代氏)が、20年以上にわたる記者や編集者との生々しい駆け引き、社内でのあつれき、成功談・失敗談から導き出された「記事や番組に採用されるためのテクニック」「メディアとの関係構築法」「危機感管理術」などを、当時の現場の様子や本音を交えながらリアルに書きつづっています。読み物としても楽しめる中身の濃い1冊に仕上がっています。

第1章 広報しか知らないマスコミの素顔
第2章 取材対応こそ危機管理の要
第3章 経営者が知っておくべきマスコミ対応の落とし穴
第4章 掲載を勝ち取るマスコミへのアプローチ
第5章 天国と地獄が交錯するプレス発表会
第6章 今だから言える企業広報の裏話
全83エピソード(350ページ)
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