質問にすべて広報が答えてしまう。社を代表しての“公式見解”ですから「話が早い」と思いがち。ところが取材する記者にとっては「話にならない」ことが往々にしてあります。会社の状況や製品について“隙のない”説明を求められるので、広報に話し上手な人が多いのも事実ですが、あまりおしゃべりなのは考えものなのです。

広報の私がすべてお答えいたします ※画像はイメージ(写真:Gorodenkoff/Shutterstock.com)
広報の私がすべてお答えいたします ※画像はイメージ(写真:Gorodenkoff/Shutterstock.com)

広報が「黒子」である意味を考える

 この「風雲!広報の日常と非日常」も気が付くと連載100回を超えていまして、ご愛読いただき感謝いたします。どうやら、広報の担当者自身がこうして広報の仕事について語っている読み物は珍しいらしく、そんな点を評価いただいているのかなと思っています。

 そうなのです、広報とは基本的に「黒子の職業」なのです。今回はその黒子であることの意味についてちょっと考えてみました。

 一般の方のイメージとして広報担当者の持つスキルの1つに「しゃべりがうまい」というものがあるようです。確かに、初めて自分の会社に興味を持ってくれた記者に会社や製品についてざっと説明し、正確に理解してもらう必要があるので、広報はしゃべりがうまいに越したことはありません。

 実際、企業広報をやっていますと例えば「Wi-Fi 6への貴社製品の対応状況は」のような技術動向について質問があり、ごく当然のように広報が会社を代表してこれに回答します。このような状況においてはタイムリーかつ分かりやすく説明できる「おしゃべりな広報」は重宝がられることはあっても疎まれることはないでしょう。

 しかし広報が必要以上にしゃしゃり出ると、せっかく生の声を取材できると思っていた記者は邪魔をされたと感じてしまいます。「しゃべりがうまい」と「おしゃべり」はちょっと違う(らしい)のですね。

 おしゃべりというのは自覚症状がほとんどない恐ろしい病でして、私も(らしい)と書くくらい自覚がないので、恐らく知らず知らずのうちにいろいろ失敗をしているのだと思います。それでもあまりにひどいと、自分でこれはやりすぎたな、と分かることがあります。

広報がしゃべりすぎて大ひんしゅく!

 ある時、わが社の開発担当役員がイベントのパネルディスカッションに登壇しました。その壇上で、開発途中の試作機を見せるパフォーマンスをやったことがありました。案の定そのセッションが終わるとIT系の記者が登壇席に飛んできて、自然発生的に「囲み取材」が始まりました。

 記者「その試作機はいつごろ発売の予定ですか?」
 役員「えっと……」
 鈴木「来年前半の商品化を考えています」
 記者「どのような特徴があるんでしょうか」
 役員「いろいろありますよ。例えば……」
 鈴木「はい、軽量で、頑丈、画面もくっきりです」
 記者「鈴木さん、少し黙っててもらえませんか」

 実を言うと、その幹部は普段あまり社外の人と接することがない技術屋肌の人でした。正直、この人が未発表製品の計画について出たとこ勝負でマスコミに話すなら、広報の自分が説明したほうが変なトラブルにならないし早いのにな、と思ったのです。

 この場合の正解は、その幹部に話していい部分とだめな部分という「遊泳禁止区域」を事前に説明しておくことです。しかし、ちょっと準備が足りず失敗してしまいました。

 記者にとって広報は取材する企業の玄関であって、広報を通して会社の深いところを見せてもらいたいのに、何でもかんでも玄関で用事を済ませてしまっては、文字通り玄関払いを食らってしまった感覚になりますので、以降注意するようにしています。

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