マーケティング活動において、今や「動画」に関する理解とスキルは欠かせません。広報の仕事においても例外ではなく、社内のさまざまな部署から「この動画を広報できないか」と相談を受けます。今回、筆者の鈴木正義氏の元に、ツッコミたくなるような“奇妙な動画”が持ち込まれました。さて、どう乗り切ったのでしょうか。
広告賞受賞の感動動画、ニュースにならず
いつのころからか、我々は動画というものにすっかり取りつかれてしまいました。YouTubeにビデオ会議、ウェビナーと、とにかく企業のマーケティング活動をやるうえで、「すいません、自分ら不器用なんで動画はちょっと……」なんて言っていられないくらい、誰もが動画作成のスキルを求められています。
その一方で、広報の世界では動画との相性はいまだ手探りの状態にあるように思います。どの辺りが手探りなのかと言いますと、面白い動画を作りました、というだけではなかなかニュースにはしてもらえないということです。
例えば私が兼務するレノボ・ジャパン(東京・千代田)で、ちょっと感動的な動画を作ってきたチームがありました。内向的な少年がパソコンを与えられたことで、思いがけない才能を開花させるというストーリーで、最終的にアジアの広告賞を取ったなかなかの出来栄えの動画でした。
しかしこれ、全くと言っていいくらい記事にしてもらえませんでした。動画そのものは興味深くても、それを報道する「ニュースそのもの」が、読者の興味を引くようには書けない、ということだったのです。そんなこともあって、個人的には「動画の広報は難しい」という感想を抱いております。
ところが、うちの社員はどこかで面白い動画を紹介したニュースでも読んだのでしょう。とにかく次々と「動画を作ったので広報してほしい」という依頼が我が部署にやって来ます。
「鈴木さん、この動画、広報でプレスしてもらえませんかね?」
先日も同じような依頼があり、正直内心では「やれやれ、またしてもこの手の依頼か……」と思いました。しかし一応動画を見ると「ん?」と思うところがありました。
「パソコンは投げない」
「パソコンをたたかない」
これは、政府の方針もあって学校向けにパソコンを大量に販売したのはいいものの、子供があまりにも乱暴にパソコンを扱うことに悲鳴をあげたレノボが、注意喚起のビデオを子供に見てもらいたい、という意図から作ったものでした。
しかし、そんな背景を知らない大人がこの動画を見ると、まず、真面目なトーンで読み上げるナレーションがシュールです。次に、こんな基本的なことを注意しなきゃならないのか、という疑問が湧いてきます。
「もしかしてこの動画、いけるんじゃないかな?」
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