新製品の発表会などで、記者を座席まで案内するのは広報の仕事の1つです。空席をつくらずうまく収めたときは達成感があります。この「誘導係」はあまり目立たない仕事ですが、そこから見えてくるものも少なくありません。意外とやっかいなのが、身内のメンバーだったりします。どういうことでしょうか。

「あら、お久しぶりですね。今日は社長も出席しますのでよろしくお願いします。では、お座席まで案内いたします」 ※画像はイメージ(イラスト:Yuka Kumagai/Shutterstock.com)
「あら、お久しぶりですね。今日は社長も出席しますのでよろしくお願いします。では、お座席まで案内いたします」 ※画像はイメージ(イラスト:Yuka Kumagai/Shutterstock.com)

1人の空きもつくらず座席を埋めろ

 広報の仕事というと華やかな印象があるようですが、それは業界による気がします。そこで今回は、日の当たらない広報発表会の裏方仕事の1つ「誘導係」について紹介します。

 「前方の席から順にお座りくださ~い」「1つ詰めていただけますでしょうか?」――。まず広報の誘導係は、「テトリス」好きにはぴったりの仕事です。座席(特に前方)を隙間なく埋められるかどうかは、誘導係の力量にかかっています。願わくは1人の空きもつくらず、びっしりと埋まった会場に快感を覚えるくらいになりたいものです。謝罪会見や決算株主総会でなければ、会場に足を運ぶメディアの皆さんも朗らかですから、結構楽しめると思います。

 ちなみに誘導係とセットで動くことの多い「受付係」は、名簿のチェックに加えて、ストラップや資料の配布、さらには伝達事項もあるなどかなり慌ただしい現場なので、皆さんが思っている以上に緊張感があります(規模によっては、受付と誘導を分けていない場合もあります)。それに対して、誘導係は笑顔で動き回りながら「お久しぶりです~」なんて言いながら顔見知りの記者とあいさつを交わし、時間に余裕があれば軽く世間話もできます。会場内で発表会も見られ、勉強になるので比較的初心者向きです。

 誘導係が一番忙しい時間帯は、受付と同じく発表会の10分前から15分後くらいまで。大抵、開始10分を切ったころから来場者が増えてきます。5分前、3分前、2分前、1分前……ここで、ぱたっと来場者がいなくなります。不思議なもので開始時間には、ほとんど来ません。少しの空白時間を経て、軽く息を切らして大汗かきながら「いやー、すみません」と申し訳なさそうにいらっしゃるのがいつもの流れです。こちらとしては、「ぎりぎりになるほど過密なスケジュールを縫って、交通費までかけていらしてくださることに感謝です!」といった心境です。

発表会が始まっても気が抜けない

 映画館でも劇場でも、遅れて暗い会場内に入るとペンライトで誘導してくださる係員の方がいます。会見開始後、誘導係はそれをやります。ただ劇場や映画館とは異なり発表会は撮影することが前提なので、光を発するペンライトは使いません。また席番号も決まっていません。こうした条件の中、用意した席に余すところなく着席していただくように誘導していきます。

 しかし、写真の撮りやすさや移動のしやすさ(途中退席する方は端の席を好む)などもあり、思う場所に座ってもらえないのも事実です。こればっかりは仕方のないことですから、開始直前に空いている席の数と、出席の連絡があったもののまだいらしていない方との数を照合し、さらに連絡なしに出席される可能性がある記者の数を予想して、必要であれば座席を追加しておきます。併せて、空いている席までどのルートで誘導するかをシミュレーションしておくことも、ばたつかないために必要なポイントです。足元の荷物の有無、通路の広さ、視界や撮影を遮らないかも要チェック。

 いつも思うのですが、発表会が終わるまで椅子は大変重宝な存在なのですが、終わると同時にじゃまな存在へ一気に変わります。椅子をにらみつけ、舌打ちをしている方を何度も見たことがあります。そういうときは慌てて椅子を片付けるのですが、椅子が多過ぎると、急いで移動したいと思っている記者の通路を妨げてしまうのでよくありません。とはいえ、席が足りないと遅れてきた方が座れないだけでなく、立ち見が増えて他の方の取材の妨げになるので、これまたよろしくない。最終的に1席多いくらいを目指して、テトリスのように思った通りにはまると、「よっしゃ!」と心の中でガッツポーズをしています。

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