多くの会社、仕事でKPI(重要業績評価指標)が問われるようになっています。当然、広報にもKPIが存在しますし、テレワークが普及した現在、その設定がより重要になっています。とはいえ広報のKPIというのはかなり設定が難しいのだとか。筆者の鈴木正義氏が昔やらかした話を振り返りながら、広報のKPIについて考えます。

ライン川のほとりで「このままでは日本に帰れない!」と嘆く鈴木正義氏の目に、美しいケルン大聖堂はどのように映っただろうか ※写真はイメージ(写真:Kadagan/Shutterstock.com)
ライン川のほとりで「このままでは日本に帰れない!」と嘆く鈴木正義氏の目に、美しいケルン大聖堂はどのように映っただろうか ※写真はイメージ(写真:Kadagan/Shutterstock.com)
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カメラの見本市でやらかした

 「まずいまずい。このままでは日本に帰れない!」

 あれは2006年だったでしょうか、私はドイツのケルン市内を流れるライン川の川面を眺めながらこんな独り言を言っていました。といっても、別にパスポートを無くしたわけではありません。この時、私は世界最大規模のカメラ展示会「フォトキナ」を訪れていました。当時勤務していたアップルが写真加工ソフトの発表をフォトキナで行ったので、日本のプレス対応をするために出張で来ていたのです。

 しかし、思惑が大きく外れ、記事のほうは芳しい結果が得られませんでした。要するに「やらかしてしまった」のです。高い海外出張費を会社に出させておいて、手ぶらに近い状態では帰るに帰れません。万策尽き果て、冒頭のとおりライン川の流れを眺めていると、ワールドカップ予選でゴールを外してこのまま失踪しようかと思った、というサッカー日本代表選手の気持ちが少し分かった気がしました。

 何がまずかったのかを今振り返ると、フォトキナという展示会の主役はカメラです。日本からもたくさんの記者が現地に来ていますが、この記者らはカメラ本体が専門です。つまり、一見するとたくさんの記事が獲得できそうなのですが、この時アップルが発表したコンピューターのソフトについて本業で書いているIT系の記者は、ほとんど現地にいなかったのです。さらに言うと、仮にソフトについても書ける記者がいたとしても、カメラの新製品の記事で各媒体が競っている展示会では、ソフトの記事は後回しになってしまいます。

 にもかかわらず、こうした事情を甘く見ていた私は、カメラ誌Aで1本、カメラ誌Bで1本、というように知っているメディア=書いてくれるであろうという、かなり楽観的な露出の予測を事前に会社へ報告していたのです。いうなれば、海外出張前の段階でのKPI設定においてやらかしてしまっていたのです。

転載も多い昨今、広報のKPI設定は難しい

 皆さんの会社でも何らかのKPIの設定が行われていると思います。広報部門を配下に持つ管理職の方も、KPI設定について広報担当と面談をして、具体的な指標を設定しているのではないでしょうか。